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アメリカ一の大富豪の娘と、英国貴族の結婚。
それは国中を揺るがし、瞬く間にニュースとなった。
「おい見たか、新聞!」
「ああ、コール家のお嬢様と侯爵様の結婚だろ?」
「……」
その街人の話を聞く男が、ひとり。
男は煙草を加え、鋭いつり目で彼らの後ろ姿をじろりと見た。
「……」
彼は近くの店で新聞を手に取ると、その場で広げる。
紙面には、大きくエリザベスとアーサーの婚約情報が記されていた。
「……ふーん。」
男は声を漏らし、ばさりと新聞を元あった場所に置いた。
再び人混みにまぎれながら、彼は思考を巡らす。
(……結婚、ねえ……よくやるもんだぜ。俺の孫も、カークランドの兄貴も。)
しかし国の化身が、よく結婚なんて決めたものだ。
煙草の煙をまき散らし、彼が歩いていたその時。
「……フレッド!」
がっと肩が勢い良く掴まれる。
彼が振り向いた先。煙草の煙の向こうに見た、その顔は。
「君……フレッドだろう!?」
自分とよく似た顔をした。かつて争った、国の片割れ。
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2015年12月28日 1時