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dt「申し訳ないけど、俺はまだ帰れないから二人で帰ってもらってもいい?」
「分かった、送ってくれてありがとう。頑張ってね」
入口まで送ってくれた涼太と別れ、兄と二人で来た道を戻る。
警察署から出てから一言も言葉を発さない兄は、その代わりとでもいうのだろうか、私の手を繋いだ。
そういえば、小さい時によく私が逸れそうになってお兄ちゃんが手を繋いで歩いてくれたなぁ…なんて、久しぶりに繋いだ兄の大きな手の温もりを感じていると、突然何かを思い出したのか、はっとした表情を浮かべた兄が立ち止まった。
「どうしたの?」
iw「………なのかもしれない…」
「え?」
ほとんど聞き取れない声と、どんどん真っ青になっていく兄の顔。
iw「…機械人形かもしれない」
「機械人形?機械人形がどうかしたの?」
家まであと数百メートル、というところで兄に腕を引っ張られて路地裏に連れて行かれる。
「ちょ、ちょっと、どうしたの…?」
iw「もしかしたら、今日俺が見た犯人、機械人形なのかもしれない」
今度ははっきりと、でも聞き取れるギリギリの声の大きさだった。
「待って、お兄ちゃん犯人のこと見たの…?」
肯定の意味を込めた小さい頷きに、今朝亮平と涼太と話していたある事件のことを思い出した。
”殺害しているのは機械人形なんじゃないかって言われてるんだ”
嫌な予感がする。
もしかしたら、何か大きな出来事に巻き込まれるかもしれない、と。
「お兄ちゃん…この話、他の誰かに話した…?」
自分で言うのもなんだけど、私の勘はよく当たる。
だからこそ怖いのだ。
iw「いや、まだ誰にも言ってないし、機械人形のこともさっき思い出した」
「そっか、とにかく一旦家に帰ろ。涼太が帰ってきたら一応この話しておいた方がいいかもね」
少し落ち着いてきたのか、真っ青だった兄の顔色も良くなり、一度離した手をもう一度繋いで歩き出す。
iw「…アイスでも買って帰るか」
「えっ、ピノ食べたい!あ、でもハーゲンダッツも捨てがたいな…」
iw「コンビニ着くまでに何にするか決めとけよ?」
今はまだ憶測に過ぎないし、私の思い過ごしかもしれない。
とりあえず今は事件の事は忘れて、何のアイスを奢って貰うか悩むことにした。
「被疑対象、確認。」
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作者名:あさい。 | 作成日時:2023年2月22日 2時