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「どうしたんだ？ほら、こっちに来なさい、見てあげるから」
そう言って男は今までのように機械人形に向けて両腕を開く。
機械人形は男に抱きしめられることが大好きだった。
優しくトントンと背中を叩かれると凄く安心した。
だが、それももう過去の話である。
こいつに処分されるくらいなら…っ！
処分されたくない、その一心で機械人形は近くにあった男が作った拳銃を手に取り、引き金を引いた。
パンッという乾いた音と共に目の前の男が倒れる。
即死であった。
男の隣にいた技術者はその状況に焦って逃げ出そうとしたが、機械人形の持つ拳銃から放たれた弾によってすぐに動かなくなった。
「っ…ふっ…っっ」
涙が止まらなかった。
悲しい、憎い、辛い、苦しい、許せない、嫌い、嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い…！！
大好きだった人の裏切りにより、機械人形は正常な判断が出来なくなっていた。
銃声を聞きつけやってきた人々を手当たり次第撃ち殺していく。
逃げる者は足を、叫ぶ者は喉を、抵抗しようとする者は腕を、機械人形は正確に狙いを定め、撃つ。
気付けば、立っているのは機械人形だけになっていた。
｢ははっ、…あははは…っ｣
返り血で真っ赤に染った自分の姿に乾いた笑いが込み上げてくる。
血の海と化した研究所に機械人形は愛着など無かった。
身を刺すような冷たい風が吹く真冬の夜、機械人形は作られてから今までのほとんどを過ごした研究所を飛び出し、ただひたすら無我夢中に走り続けた。
彼の目からはもう、涙は流れていなかった。
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作者名：あさい。 | 作成日時：2023年2月22日 2時
