la coexistence (ページ1)

今日:22 hit、昨日:3 hit、合計:32,720 hit

序章ページ1

.

ある1人の男が使われなくなった機械を廃棄する工場で働いていた。

この男は幼い頃から天涯孤独で、誰にも愛されたことがなく愛に飢えていた。

見なりも決して清潔とは言えない見た目をしており、周りの人間は誰も話しかけようとはしなかった。

しかし、この男はいつか人の役に立ちたいという思いと、もともと持っていた頭の良さを活かして、ひっそりと廃棄されるレーンに流れてくる部品を少しずつ持ち帰っては、それを組み合わせて様々な機械を作っていた。

ある時、道端でふと目に入った人形を見て、機械で作った人形が人々の生活を手助けしてくれたらもっと暮らしやすい世の中になるのではないか、ということを思いつく。

そこで、また少しずつ機械人形を作るための部品を集め出す。

少しずつしか作れないため時間はかかったが、その分愛着が湧き、自分が今まで一度も受けたことのない、愛をくれる、愛してくれる存在を作ろうとした。

ようやく完成した頃には作り始めてから約３年の月日が経っており、それまでに部品をこっそり持ち帰っていたことが工場主にばれてしまい、工場を辞めさせられられてしまう。

もともとそんなになかった貯金は、収入源がなくなったことで飛ぶように消えていく。

また、男が工場から機械の部品を持って帰っていたことを知った工場主が、警察に窃盗として被害届を出し、その部品の押収と取調べのために、男の家に警察がやって来る。

「ま、待て…！
これだけは私から取り上げないでくれ…！」

そう言って男は完成したばかりの機械人形を抱きしめる。

.