. ページ9
「……」
「…今日は、知らない街にでもいくか」
俯いた僕に、涼介は困惑していたけど。
涼介は何も知らないふりをして、いつも遊ぶみたいに何も変えずそう言った。
そりゃあそうだ。
変わるはずなんてない。もともと変わるような大したものでも何でもなくて。
いつもの、優しい涼介だった。
僕にだけ特別甘い、優しすぎる涼介。
こんなふうに誘われるのも普段通り。
でもその普段通りが、
こんな苦しいと感じたのははじめてだった。
いつもみたいに何も無かったようなふりして、
上手く誤魔化して行きたかったけど。
でも、今日はダメ。
もう、涼介の思い通りになんて、なりたくない。
ズルズル引き込まれちゃいけない気がする。
涼介にとっても、僕にとっても、この関係はまぬるま湯に浸っているような温かいけど芯までは温かくなりきれないもの。
メンバー以上でも恋人未満でもないこの関係に、
心底僕も疲れていたんだ。
「……やめよ」
「え??」
断られると思ってなかった涼介は、
少し顔がひきつってる気もした。
でも、それもすぐ変わって、
ふと口を緩めた涼介。
「そんなにヤりたい?」
そう嬉しそうにつぶやく涼介に、
ほんとにバカと思った。
「違くて。もうさ、こんな関係やめよ」
そういった途端、─キキッと車が止まって。
涼介がこっちを向いた。
「やめるってなに?」
「そのままの意味だけど」
「わかんねーよ」
「だから、この関係を終わらせたいの」
目を大きく見開き、形のいい口が震えているようにも見える。
ゆらゆらと揺れる大きな黒目が、
やけに印象的だった。
90人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トルタ(プロフ) - cocoaさん» ありがとうございます。私の中の知念さんって儚さがあるイメージなんですよね…笑なのでそれを可愛いって言ってもらえて嬉しい限りです。低更新ですがこれからも楽しんで頂けると幸いです。 (2018年3月7日 17時) (レス) id: 2320849466 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa - 初めてコメントさせていただきます!トルタさんのかく、知念さんの儚い感じがとっても可愛いです…!!ゆっくりでいいので、更新頑張ってください。応援してます! (2018年3月6日 6時) (レス) id: 950c02c76a (このIDを非表示/違反報告)
トルタ(プロフ) - 山田つばささん» ありがとうございます。そう言ってもらえると頑張れます笑 低更新ですがこれからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2017年7月23日 7時) (レス) id: f2950f8700 (このIDを非表示/違反報告)
トルタ(プロフ) - まじゅさん» ありがとうございます。BLの良さってありますよね…しみじみ思います笑 (2017年7月23日 7時) (レス) id: f2950f8700 (このIDを非表示/違反報告)
山田つばさ - 私には到底書けない繊細な表現がすっごく好きです笑笑 更新楽しみにしてます! (2017年7月20日 14時) (レス) id: ba7553ac36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:トルタ | 作成日時:2017年5月15日 17時