Dreamers ～夢の中で彷徨う僕等は～【SEVENTEEN】 (ページ30)

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31 ミンギュ side ページ30

それから数時間たち、ミンハオは絵がひと段落すると「また寮でな」とアトリエを後にし帰っていった。

俺はというと未だに真っ白なキャンバスと
睨めっこしている。

〝答えは１つじゃなくてもいいんじゃない？〟

先程のミンハオの言葉を頭の中で駆け巡らせながら俺は天を仰いだ。

今の俺って何者なんだろう？

夢を追いかけてる青年？

カメラや絵が好きな大学生？

両親に縁をきられた子供？

そして今……

俺、もしかして夢を諦めようとしてる？

数日前の電話越しの父の声が蘇ってくる。

〝もうお前は家族じゃない〟

そう言われた時、俺の中の何かが
壊れていくのを感じた。

まるで……心がガラスの様に砕け
崩れ落ちていくみたいに。

もう一度、真っ白なキャンバスを見つめる。
　

あぁ、そうか。

「答えは１つじゃない」

俺は筆を持つとキャンバスに描き始めた。

俺の心は今、3年前の17歳のあの頃とは違うんだ。

真っ直ぐに１つのものに恋い焦がれてたあの頃とは。

辺りが暗くなり人気がなくなる中
俺は筆を休めることなく描き続けた。

自分の下手な絵に落胆し

好きな写真のコンクールでさえいい成績が残せず

その夢を追いかけた末に家族を失くそうとしている。

夢を追う中で向き合わなければならない現実はいつも厳しい。

その逆境に苦しみ、押し潰されては立ち上がり、そしてまた悩むのだ。

その苦悩こそが今の俺そのものだ。

窓から朝日が差し込む。

「うわっ、もう朝か」

気づけば俺は10時間以上も筆を走らせていた。

「今日の講義は朝一にあるのに寝る暇ねぇじゃん」

俺は昇り行く太陽の輝きを見つめながらそう呟いた。

でも……

「描けた…！」

目の前の彩られたキャンバスを見つめる。

鏡にヒビが入った様に
自分の顔に亀裂を入れて

そこに映る複数の自分に様々な表情を投影する。

夢を真っ直ぐに見つめる無邪気な自分

現実を知り戸惑う自分

それでも、もがき足掻く自分

そして、それに涙する自分

どの顔も全て俺自身そのものだ。

「答えは１つじゃない、か」

ミンハオの言葉を思い出して
俺は頬を緩めた。

絵を描き終えても
家族と夢、どちらを選択するか
俺は未だに分からないままだ。

だから答えが出るまで俺はここで
必死にもがき続けよう。

そしてその末に自分が求めるもの、心揺れ動く方に、
俺は歩いていこうと思う。