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祖母のいる家に帰り着きドアを開ける。
『おばあちゃん、ただいまー』
「おかえりA。
今ちょうど昔のアルバム見てたのよ」
祖母は椅子に腰掛け
分厚いアルバムを愛おしそうに眺めていた。
写真には幼き私と父と母の3人が
幸せそうに笑いあっていた。
『ねぇお婆ちゃん。
お父さんが夢を追いかけた時、反対しなかったの？』
「え？」
『お婆ちゃんは分かってたんでしょ？
もしかしたら、自分よりも息子の方が
先にいなくなるかもしれないって…』
祖母は困惑した表情をしていた。
「A……」
『あ、ごめん。急にこんな事聞いて…
やっぱり忘れて』
祖母は写真の中の父を指で優しくなぞりながら口を開いた。
「高校生の頃から、あの子は連絡もなしにふらふら〜っと居なくなって、いろんな国に写真を撮りにいく自由な子だったわ。
あの子の写真は、神秘的な自然だったり、
発展していくテクノロジーだったりいろいろだった。
でもね、1番多かったのは発展途上国の
不衛生な環境や、目を背けたくなるような現実。
そして、そこで無邪気に笑う子供たちだった。
私はね初めてその写真を見た時、泣いたの。
今まであの子は、危険な場所に何度も足を運んでたんだって知って。
それなのに、あの子はいつも家に帰ってくると
楽しそうに笑うの」
祖母の頬に涙が伝う。
歳とると涙脆くなるからいやね、と言いながら祖母はハンカチで涙を拭う。
「20歳。今のあなたと同じ歳よ。
あの子が報道写真家、戦場カメラマンになるって私を真っ直ぐに見つめて言ったのは。
反対はしなかったわ。言っても聞くような子じゃないって分かってたから」
『…後悔してる？』
「どうかしらね。でも、あの子が歩みたい道を歩めたのなら、それで良かったのかなって思ってるわ。
例え人より短い人生だったとしても
あの子はきっと幸せだったはずだから」
祖母は優しく微笑んだ。
「あの子の人生がかけがえのないものになるのなら
私はどんな夢だって応援したわ。
A。それは貴方も同じよ」
『あのね、お婆ちゃん…』
真っ直ぐにこちらを見つめる祖母の手に自分の手を重ねる。
『私はずっとお父さんに捨てられたような気がしてたの。そうじゃないって分かってても
心の中でお父さんは私よりも写真を取ったんだって』
「A…」
『ねぇ、お婆ちゃん。
夢ってそんなに凄いの？
私はお父さんみたいに
ミンハオやミンギュみたいに
皆みたいに
未来が上手に描けないよ……』
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作者名：lala | 作成日時：2021年3月7日 0時
