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待ち合わせの場所に着いたが、約束の時間より早く着きすぎたようだ
分かりやすいところに移動し連絡を入れる
少し早く着いちゃったから、ここで待ってるね
写真も一緒に送り、携帯をしまう
待っている時間も暇なので、すれ違う人を観察してみる
あの人のコーデ可愛いな、あの人すごい急いでるけど遅刻しそうなのかな、とか
色々な発見があって意外と楽しく、時間が経つのが早く感じた
「主人公…さんッ!ごめん、待たせたッ…!!」
走ってきたようで少し息を切らしながら私の名前を呼ぶ
彼に名前を呼ばれるのは久しぶりなせいか心臓が高鳴る
「また"さん"付け(笑)大丈夫だよ、それよりも走ってきてくれたんだね。」
「急がせちゃったかな、ごめんね」
私が早く着いたせいで彼を走らせてしまったことに罪悪感を覚える
「んや、大丈夫。」
行こ、と自然な流れで私の手を引く彼の耳はほんのりと赤くなっている
付き合っているわけでも、人が特段に多いわけでもないのに手を引いてくれる彼に期待をしてしまう私はなんて単純なのかしら
少し前を歩く彼をじっと見つめてみる
サラサラの白い髪の毛は太陽に照らされてキラキラと輝いている
黒を基調としたコーデはとても彼に似合っていて、本物の王子様のよう
ただ普通に歩いているだけなのに、彼の周りだけ特別な何かに包まれているみたい
すると突然歩みが止まり、ぶつかりそうになったがギリギリ止まれた
不思議に思い自分より顔一つ分ある彼を見上げると、頬をほんのり赤く染めているではないか
可愛いな、どうしたんだろう
「ッスー…めっちゃ視線、感じるんですけド…」
「あ…ごめんなさい、つい、」
見過ぎだったようで、此方をちらりと見ながら呟いた
「いや、大丈夫だけど…なんかあった?」
「んー、内緒」
私の返答にぽかんと口を開ける彼の姿が面白くて笑いが零れる
「行こ!」
今度は私が彼を引っ張るように歩きだす
暫くして我に返ったようで、私の隣に移動してきた彼は問い詰めてくる
「ほんとになに?めっちゃ気になるんだけど」
緊張がほぐれたのかいつもの調子に戻った彼に安心したのはここだけの秘密
「…は?」
「王子様の隣にはお姫様しかいちゃいけないのよ…!」
瞳の奥に渦巻く憎悪と嫌悪の黒い影
ガリっと爪を嚙みながら見つめる先には二人の男女
可愛いあの子はもういない
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作者名:右京 | 作成日時:2024年3月20日 22時