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葛葉side


叶はゆったりとした動作で近づいてきて、隣のブランコに腰を掛けた



ブランコとか懐かし〜なんて言いながら呑気に漕いでいる



その姿に本日何度目かもわからない溜息が零れる



「なに溜息なんてついてんの(笑)」



此方を見つめて少し笑いながら話しかけてくる



その瞳はいつものように温かい



返事をしようと思っても思うように言葉が出てこず、下を向いた



そんな俺を一瞥してから上を見上げた叶はぽつぽつと話し始めた



「お前はさ、不器用すぎなんだよ」


「優しすぎるがゆえに人を優先しすぎてる」


「変なところで遠慮なんてすんなよ」



何を言い出すのかと叶を見ると、叶も此方を見ていた



「自分を押し殺しすぎ」


「もっといつもみたいに自分らしくしなよ」


「いつまで下向いてんの、彼女は歯食いしばって前向いてるよ」



その言葉に息を呑み、呆然と目の前の男を眺めた



口はからからに乾いて、体のどこからも声は出てこなかった



まるで夢から覚めた様な感覚に陥った



そんな俺を見てクスッと笑った叶は、それじゃあ僕は帰るね、と立ち上がった



その後ろ姿を見てハッとした俺は慌てて呼び止める



「…サンキュ、それと…ッ!」



その先の言葉は言えなかった



だってあまりにも



あまりにも苦しそうで






何かに耐えるような表情をしていたから







「それじゃ、また明日ね」



先ほどまで合っていた視線は交わることはなく、公園から出ていった



俺はその表情が忘れることが出きず立ち尽くし、その姿が見えなくなってからも動くことが出来なかった

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作者名:右京 | 作成日時:2024年3月20日 22時

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