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葛葉side
いちごみるくが届き、また静寂が場を包む
とはいっても最初と比べれば穏やかな静寂であることに安心感を持つ
一つ気になるとすれば、なぜか此方をじっと見つめてくる彼女だけ
「(なになになに、なんでそんな見つめてくんの、怖い、俺何かした?!)」
自分でも不自然と思うほど動く目と心臓を落ち着かせるためにいちごみるくを一口飲む
美味しいな、なんて思うと同時に聞こえてくる彼女の声
「かわいい…」
「は…」
いきなりすぎて頭の処理が追い付かないでいると彼女は勢いよく口を押えた後、何かをごまかすかのように手元のカップに口をつける
何に対しての言葉かわからないが、俺に向けてというのは確実だろう
だってあんなに見つめてきてたから
軽く頭を振って冷静さを取り戻そうとし、もう一度飲もうと目線を上げるとそこにはものすごく目を輝かせている彼女の姿が目に映る
夢中になっているのか、じっといちごみるくを見つめ、一口、また一口と口をつける
その度顔には笑顔が浮かんでおり、此方に気づく様子もない
可愛いな、なんて見つめているとだんだん面白さが沸きあがってきてついには耐えられなくなった
「んふッ…(笑)たかがいちごみるくにそんな目ぇキラキラさせる人初めて見た、(笑)」
そんな俺にムッとしたように言い返してきたことに驚いたが、初めて見た一面を見れた喜びと、ちょっとした出来心で少し意地悪なことを言ってみた
案の定少し赤かった顔を更に赤くした彼女に謎の達成感を感じ、手元のカップに口をつけた
「はい、いつもかっこいいのに可愛いなってつい見つめちゃいました」
「んッ?!」
突然突拍子もないことを言われ驚いた俺は、思いっきり咽てしまった
視界に現れたハンカチを遠慮なく受け取りそれで口を押えると、ふんわりと香る優しく甘い匂い
急に何を言い出すのかと顔をあげると、心配したように見えて、してやったりというような表情をする彼女
その姿でさえ可愛いなと思ってしまう俺は重症だ
耳に集まる熱には気づかぬふりをして
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作者名:右京 | 作成日時:2024年3月20日 22時