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驚いて声も出せず、ばっと振り返ると
いつも焦がれていた彼の姿
そんな彼は私が勢いよく振り向いたことに驚いたのか
はたまた、こんなところに一人で立っていることに驚いたのか
目が染まるほど鮮やかな赤が
大きく見開かれ、此方を見つめていた
「か、風邪…引きますよ、」
「え…?あ。雨…」
たいして降ってはいない雨音にさえ負けてしまいそうな
そのぐらい小さく、か細い声だったが彼の言葉は明瞭に聞こえた
まるで耳元で話しかけられているかのように
雨が降ってきたことさえ気づかないほど、この公園の景色に見とれていたなんて驚いたが、それよりも彼がここにいる事の方が驚きで、また頭がぼんやりとしてきた
「あ、の?」
「…!ご、ごめんなさい。少し疲れていたみたい。それじゃあ…」
彼に話しかけてもらったことなんて初めてで、心臓が破裂してしまうのではないかというほど早く動いている
そんな動揺を見せないように、立ち去ろうとした
そう、したのだ
彼が私の腕を掴むまでは____
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作者名:右京 | 作成日時:2024年3月20日 22時