君に捧ぐラストソング ページ27
.
「…不破さん!!!」
「か、勝った…」
作戦通りにはいかなかったが、見事不破さんがNO.1になった。本当にギリギリの戦いだった。最後にあのアルマンドを卸したのは正解だった。それから不破さんがラスソン、つまりラストソングを歌い始めた。不破さんの歌は初めて聞いたが、とんでもなくうまかった。不破さんも晴れやかな表情をしていて私も自然と頬が緩んだ。
.
「本当に、いいんですか?」
「何が?」
「お店を、今日で辞めるって」
「?Aちゃんと約束したやん?」
至って当然のように不破さんはそういった。私が不安げな表情をすると、不破さんはそれに、と付け足して口を開く。
「夢も叶ったしな」
「NO.1ですか…?」
店からの帰り道、不破さんと手を繋いで仲良く帰る。不破さんはもうホストの不破さんじゃなくて、以前のような不破さんだった。私の質問に返事がなくて、不破さんを見上げるとパチリと目が合った。
「Aちゃん、やっぱりまた一緒に暮らさん?明那も心配してるし」
「………不破さんにとって私はどんな存在ですか?」
「なんやろなぁ……家族、みたいな」
「ッ、」
やっぱり不破さんは私を一人の女性として見てくれていないんだ。どう頑張っても私は不破さんの恋人になれない。そんな気持ちで不破さんと暮らすことなんて、
「不破さんっ、」
「家族みたいな、関係になりたいなぁって思ってるんよ。…Aちゃんと俺は10歳近く離れてるし、自分はホストに行ってたのにAちゃんがキャバクラで働いてたら、嫉妬と不安でAちゃんに当たってしまった情けない大人やけど」
不破さんが立ち止まったことによって私も足を止める。不破さんの背後には夜空に輝く大量の星、というのは都会なのでそうないが月明かりに私達は照らされ、いくつかの星は夜空で輝いていた。けれど、不破さんの真剣な表情を見ると私は顔を彼の目から逸らせなかった。
373人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼井(プロフ) - 狛希さん» 狛希さんコメントありがとうございます。読んでいただいて、その上嬉しいコメントを下さって本当に嬉しいです。ありがとうございます!! (2月6日 17時) (レス) id: 5ecf86ccc0 (このIDを非表示/違反報告)
狛希 - 初コメ失礼します。更新されたところまで読ませていただきました!夢主さんとの心の距離がどんどん離れていくような描写がすごく心に残りました。この作品が好きです! (2月6日 16時) (レス) @page23 id: 81e78c7a48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蒼井 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5291025/
作成日時:2024年1月15日 18時