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「今、どんな気分?………なぁ、そんな顔せんといてや。この世界で働くってことはこういう可能性もあるんよ。Aちゃん女の子やし、こうやって一人の男の前ではそんなの子猫の抵抗みたいなもんなんよ」
目に映るのは、天井と不破さんの顔。ここは、不破さんの家でもなく、私の家でもない、店から近いホテルである。そこで私は不破さんに跨がれて手首を片手で縛られていた。勿論、入る前に私が止めることも出来たが、私はそれが出来なかった。
「なんで、…………なんでこんなこと、するんですか」
意図せず涙が零れた。すると、不破さんの表情が変わり、"何してるんやろうな、俺"そう言って不破さんは私の涙を親指で拭うと私の頭を撫でた。
「…………信じたくなかったんやろうな。Aちゃんが、キャバクラで働いていたってことを」
ごめんなぁ、そう言って不破さんは私の上から退いて引っ張って私を不破さんの隣に座らせた。それからは暫く沈黙が流れた。
「Aちゃんの人生やもんな。俺が突っ込むべきやない事もようわかっとんよ。やけど…………Aちゃんにはずっと光が当たってる世界にいて欲しかった。
そう言って不破さんはベッドの端に寝転んだ。このベッドはダブルベッドで十分な広さがある為、2人で寝ても間を十分に開けることができる。それはまるで私と不破さんの心の距離のようで。私はおずおずとベッドに入ってそのまま目を閉じた。
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朝目が覚めると不破さんはいなかった。わかっていたような、わかっていなかったようなそんな喪失感に襲われホテルを出る。ホテルの料金だけ支払わられていたが、部屋には不破さんがいた証拠は何一つなかった。もしかして昨日あったことは夢だったのだろうか、そう思いたいがここにいることがそれを嘘だと言っていた。
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蒼井(プロフ) - 狛希さん» 狛希さんコメントありがとうございます。読んでいただいて、その上嬉しいコメントを下さって本当に嬉しいです。ありがとうございます!! (2月6日 17時) (レス) id: 5ecf86ccc0 (このIDを非表示/違反報告)
狛希 - 初コメ失礼します。更新されたところまで読ませていただきました!夢主さんとの心の距離がどんどん離れていくような描写がすごく心に残りました。この作品が好きです! (2月6日 16時) (レス) @page23 id: 81e78c7a48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼井 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5291025/
作成日時:2024年1月15日 18時