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そう言えば彼は少し不安げな顔をする。やはりわかるのだろうか。でも、好きだから、好きだからこそ彼は私と一緒に居ちゃいけないんだなってそう思う。彼は優等生だし、部活動もずっとしているし、みんなから慕われているし。でも、そんな彼の友達が私のことで何か言われたり、思われたりするのは嫌だ。だから、
「…別れて欲しいの。」
「……………え?」
彼は目を見開いた。なんで、と絞り出したように彼はそういった。ホントの理由なんて、言えるはずなんてなくて、嫌いだから、なんて嘘をついてしまう。
「ナマエはさ、嘘つく時目を逸らすんだよ。」
本当の理由を話すまで、逃がさないからな、なんて言って彼は私の手首を掴んだ。顔を上げると、緑色の瞳が私を貫く。彼の年齢がいつから止まっているのか私は知らない。聞こうとしなかった。何故か聞いてはいけないと思っていた。でも、私より生きてきた彼はもしかしたら私よりずっと、大人だったのかもしれない。周りの、世間からの見られ方でずっと悩んで出したこの答えも彼ならいつものように、豊富な語彙力できっと結論を出してくれるのかもしれない。思っていたより私は彼にずっと甘えていたのだ。私は彼みたいに言葉で表現することが苦手だから、一つ一つ、ゆっくりと言葉にする。彼は静かに聞いていた。
「僕も、わかっていたんです。あの時、貴方と付き合うことになって、こうなることも予想はしていたんです。…気づけなくてすみません。僕は、これしか知らないんです。」
彼は私の手首から手を離して私の周りを少し歩いてピタリと動きを止めた。私は後ろに移動した彼の方を向こうと振り返った。ピト、と彼は私のおでこに人差し指を当てた。
「これで、_____回目。」
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作者名:蒼井 | 作成日時:2024年1月12日 9時