ちゃんと好きだから（kzh） ページ1
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いつもは喧嘩していなかったのかと言われると、私は“否”と答える。彼とは恋人、というよりは友達といった関係みたいで、付き合ったのだって、友達の延長線上。彼はほとんど家から出ないし、デートなんて片手で数えるくらいしかない。恋人らしいことなんて全然で、あれ、私達付き合ってるんだよね？なんて考えることもよくある。今日喧嘩したのは彼の何気ない一言だった。
「メシ」
いや、私はお前の召使いか！とかその時は仕事で色々あって疲れていたから無性に腹が立ったのだ。だから私はそのまま何も言わないで、スマホと財布を持って家を飛び出した。私を呼び止める声まで無視して家出したはいいものの、家出から３日目、財布を取り出してその中身を見て私の顔は青ざめた。"お金が無い"
これじゃ今日、安いビジネスホテルにも泊まれやしない。あいにく通帳は家だし、上京してきたから友人も近くにいない。ため息をついてスマホの電源をつけると、たくさんの彼からの通知がなだれ込んできた。初日に“ごめん”の後に送られてきた“何が悪いかわかんねぇけど”なんて文字を見て未読スルーを決めてからずっと開いてなかったが、ロック画面に映る、私のことを心配してくれている文に少し目頭が熱くなった。帰ってしまおうか、いやでも戻ってもまた同じ気持ちになるような気がして頭を悩ませていると、私の右肩にポンと手が乗った。
「あ、やっぱりAちゃんだ。どうしたの？葛葉は一緒じゃないの？」
振り返ると葛葉の友人の叶さんがいた、”お久しぶりです、叶さん。“なんて言うと彼は何かを察したのか私をお茶に誘ってきた。叶さんなら葛葉と仲良いから、何か教えてくれるかもしれない、と私たちは近くのカフェに行った。彼は有名人だからバレないように私達は奥の席に座って。飲み物を注文し終えたところで叶さんは話題を切り出した。
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作者名：蒼井 | 作成日時：2024年1月12日 9時
