85話【僕のせいだ】 ページ39
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(少し見る人によっては気分を害される可能性有)
葛葉は小学生の時のある日、性被害を受けた。といってもニュースでよくあるような大きなことでは無い。担任の女教師に体を少し触られたということである。その女教師はもちろん退職になったが、葛葉はあれ以来女の人が怖くなってしまった。女の人は自分を性的に見ている、と。だからあの時も仲が良かったAにも葛葉は拒否反応を示した。なぜならAには好きな人がいた。僕は数回しかあったことは無いが、伏見さんという年上のお兄さんらしい。
Aは大人になったらがっくんと結婚するんだ、とそう言っていた。だからもし葛葉にあんな事が無ければきっと、Aは今でも伏見さんを好きだっただろう。Aはつい最近まで伏見さんのことを好きなこと、昔結婚を約束したことを覚えていなかった。それは僕のせいである。僕が葛葉に起きたことをAに教えたから。Aは葛葉に避けられてから僕に理由を聞きに来た。でも僕は本人の許可も得ずに、2人が仲が悪いのが辛くてその事を伝えてしまった。
『じゃあ私が恋愛感情なくせば、葛葉と元に戻れるんだね』
あの後何があったのかは僕は知らない。けれど、数日後僕と葛葉の目の前に現れたAには一切恋愛感情が無くなっていた。言わなくても、僕らはそれを感じてしまった。葛葉は顔をしかめ、Aに謝った。ごめんと、俺のせいでと。けどAは一言言った。
『なんのこと?』
と。Aは全て忘れていた。伏見さんに対する想いも約束も全部。それから僕ら3人はずっと仲良く過ごしてきた。あのことを忘れたように。葛葉はAを女の子としてではなく、友達として見ていたし、Aはその事を知らなくても、好きな人も作らずにずっと僕たちの傍にいてくれた。僕もまさか葛葉がまだあの事件がトラウマになっていたとは気づかなかった。けど、ここまでだった。
「俺、Aと話すのやめるってアイツに言った」
そういった葛葉の横顔はつらそうで、泣きそうだった。
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作者名:蒼井 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5291025/
作成日時:2023年9月1日 19時