84話【トラウマ】 ページ38
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叶side
「ごめん、星川さん止めれなくて」
「いや、いい……。あそこで止めてくれて、助かった」
先程の場所から少し離れた所で僕達は話していた。僕は葛葉がAの事で困っていたことを知っていた。といっても葛葉がAに対して距離を置きたいと思っていた時期も恐らく最近である。葛葉はずっと安心していたのだ。Aに好きな人という枠が出来ないということを。Aと1番仲が良かった明那もお互い恋愛感情を持っていないことも僕達は知っていたし、葛葉はあの日からAが恋愛感情を抱いていないことを知っていたし、これからも出来ないと、そう思い込んでいたのだろう。まぁ僕もそうであるが。
「俺、やっぱ無理だわ……」
Aがもちさんを好きなのも僕は気づいていた。むしろ僕はもちさんとAは気が合いそうだったし、むしろ2人が付き合うのも面白いと思っていた。けれど、葛葉は違った。最初こそ共通の知り合いが仲良くなったんだなぁという感じだったのだろう。葛葉はもちさんとAが仲良くなるのを嬉しそうにしていた。けれど、だんだんと変わっていった。それはAがもちさんに好意を持ってしまったことで一変した。
「まぁあんな過去があったら仕方がないよ…」
今までずっと脅かされていなかったAの好きな人という椅子が現れてしまったのだ。僕もふわっちも明那も誰だってその椅子を生み出さなかった。けれどAはもちさんにあった事で、椅子を生み出してしまった。1度はAの手で壊したその椅子を彼女はまた知らない内に作り出してしまった。
「俺は、Aも、もちさんも好きだ」
「うん、知ってる」
「だけど、俺はAが好きな人がいることによって、あいつも女だと、自覚しちまう」
葛葉は女の人が苦手だ。苦手というより拒否反応が出る。Aはあの事があって例外だが。といっても葛葉はずっと女の人が嫌いだった訳では無い。時は小学生の時に遡る。
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作者名:蒼井 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5291025/
作成日時:2023年9月1日 19時