最後のiが書けない ページ35
身体が硬直するというのは、こういうことなのか。
頭からつま先まで、まるで石になったみたいだ。
でも視線だけは、目の前のものをしっかりと捉えている。
妙に冷静な思考にただただ驚く。
改めて、もう一度横たわっている人を見た。
髪で顔が隠れていて、良く見えない。
そっと掻き分ける。
「…A」
紛れも無く、Aだった。
間違いなかった。
ずっとずっと探していた生身のAだった。
「A、」
「…」
「A、A、」
「…」
「A、A、A…A…！」
我も忘れて呼び続ける。
返答が無い。
その場にしゃがみ込み、床に顔を擦り付ける。
畳の跡が顔に付きそうだ。
「…うるさいな、聞こえてるよ」
突然耳に入ってきたその聞き覚えるある声に、バっと勢いよく飛び起きた。
さっきまで閉じていた彼女の目が、薄らと開いていた。
「A、」
「私ね、ずっと一人だったの」
「…」
「だから、あなたに届く筈も無い手紙を書き続けてたの」
「…」
「紙が終わっても、脳内で書き続けていた」
遠い目、暗い目、儚い目、切ない目。
同じジャンルの表情。
くるくるくるくる。
「全部、全部思い出したよ」
「…A、」
目頭が熱くなってくる。
「キヨっち」
「…」
「やっと、会えたね」
「…っ、」
優しく手を握られる。
痛々しそうな、笑顔。
血が滲んだ痛々しい、手。
涙腺に響く。
胸を突き上げてくる気持ちに我慢出来なくなり、闇雲に涙が溢れてくる。
「泣かないで、」
「…泣いてねーよ」
弱々しく手が伸び、目尻を拭られた。
心が温かくなってくる。
「泣いてるじゃん」
「泣いてねーよ」
「じゃあ目から出てるそれはなーに？」
「鼻水だよ！」
「汚な！」
拭ってくれてた手が一瞬で離れた。
いつものやり取りに安心する。
思わず笑みがこぼれる。
「そこまでだ」
扉が、開いた。
***
私の脳内妄想メモ帳はえらいことに(今更感)
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トマトまと(プロフ) - 続き→他の方が言っていたように、1度しか評価できないのがとても悔しいです…私も幽霊系大好きです!【覗いてはいけない】めちゃくちゃ好きな作風でした!押し入れで寝るの憧れますよね分かります。最後に、素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年4月10日 21時) (
レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 初めまして!とても素晴らしい作品でした!!最初は、生霊なのかな?と思いながら読んでいたのですが、血を流して眠っている。石の様だ。というような表現をされていたので、一瞬吃驚してしまいました。主ちゃんが生きてて本当に良かったです… (2022年4月10日 21時) (レス) @page41 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
107(プロフ) - 未愛さん» ｳｫｵｵありがとうございます！世紀末のエンジェル面白いですよね、本棚に入れてたまに読んでますー！そして占ツクは同世代が居ないのでめちゃくちゃ嬉しいです…！ (2016年6月11日 16時) (レス) id: 1080c52a3c (このIDを非表示/違反報告)
未愛(プロフ) - 今さらながら107さんの小説を知りました。短編全部読み、この小説にたどり着きました。読んでる途中に世紀末のエンジェルを思い出して後書きを読んだらビックリです。107さんと同世代みたいです。小説が素晴らしかったのと世紀末が懐かしくてコメントさせて頂きました。 (2016年6月8日 18時) (レス) id: 9d599423c5 (このIDを非表示/違反報告)
107(プロフ) - あきみゃんさん» ぎゃー！早速ありがとうございます！このコメ返したら即直しますね！ (2015年12月17日 1時) (レス) id: 1080c52a3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：107 | 作成日時：2015年7月23日 0時
