綴られなかった紙 ページ33
書かれた住所の紙とマップアプリを照らし合わせる。
…重なっている。
ここで間違いない筈だ。
もう一度目の前の家を見てみると、普通の一軒家だった。
どこか懐かしさを感じるような、少し年季の入った家。
(人1)の表札を確認し、隣のインターホンを鳴らす。
「はいはい、どちらさんですか？」
出て来たのは、至って普通のおじさん。
害が無さそうな顔、に見える。
「あ、俺、数日前にA…さんに大事な落とし物を拾って頂いて、」
「？」
「連絡先も教えてもらえず、何故か住所だけ言われたので、」
「…」
我ながらなんて下手くそな理由。
見知らぬ男に連絡先も教えずに住所だけ知らせるってこと、あるわけないのに。
「…どうぞ、上がってください」
「いいんですか？」
「立ち話もあれなんで」
中に入って靴を脱ぐと、床が軋んだ。
「お茶菓子準備するので、ちょっと待っててくださいねー」
「あ、おかまいな」
く、と最後まで言う前に台所の方へ行ってしまった。
改めて家の中を見ると、所々柱が痛んでいた。
「すいませーん！トイレ借りてもいいですかー？」
「どうぞー居間を出て右にありますー」
叫びながら伝えるとすぐ返事が来た。
…今がチャンスだ。
居間を脱出し、左を曲がると部屋が二つあった。
片方は叔父、そしてもう片方は。
ゆっくり開けると、女の子らしい部屋。
荒らされた形跡は、無い。
というか、物が少ないような。
きょろきょろ見回していると、引き出しから紙がはみ出ていた。
なんとなく引っ張ったら１枚だけではなく、大量の紙が雪崩落ちてきた。
「あ、やべ、って…え？」
『おにいちゃんへ、いまおにいちゃんのえをかいています』
『お兄ちゃんへ、今日はきらいな玉ねぎがたべれるようになりました』
『お兄ちゃんへ、中学では算数は無いんだね、数学が難しいです』
『お兄ちゃんへ、文化祭来てくれますか？』
『お兄ちゃん、助けて』
その紙は、Aが俺に向けて書いた手紙だった。
いや、手紙というよりも現状報告の短文がほとんどだった。
この手紙を見たことは、一度も無い。
幼少期のAの心情を思うと、心がチクチクしてきた。
そっと紙を取ろうとする。
「何をしているんですか？」
ビクっと身体を震わせて、ゆっくり後ろを振り返る。
そこには、無表情でこちらをじっと見ている叔父が居た。
***
更新再開致しました(ｷﾘｯ)とか書いておいて４日放置するダメ作者の鑑
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トマトまと(プロフ) - 続き→他の方が言っていたように、1度しか評価できないのがとても悔しいです…私も幽霊系大好きです!【覗いてはいけない】めちゃくちゃ好きな作風でした!押し入れで寝るの憧れますよね分かります。最後に、素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年4月10日 21時) (
レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 初めまして!とても素晴らしい作品でした!!最初は、生霊なのかな?と思いながら読んでいたのですが、血を流して眠っている。石の様だ。というような表現をされていたので、一瞬吃驚してしまいました。主ちゃんが生きてて本当に良かったです… (2022年4月10日 21時) (レス) @page41 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
107(プロフ) - 未愛さん» ｳｫｵｵありがとうございます！世紀末のエンジェル面白いですよね、本棚に入れてたまに読んでますー！そして占ツクは同世代が居ないのでめちゃくちゃ嬉しいです…！ (2016年6月11日 16時) (レス) id: 1080c52a3c (このIDを非表示/違反報告)
未愛(プロフ) - 今さらながら107さんの小説を知りました。短編全部読み、この小説にたどり着きました。読んでる途中に世紀末のエンジェルを思い出して後書きを読んだらビックリです。107さんと同世代みたいです。小説が素晴らしかったのと世紀末が懐かしくてコメントさせて頂きました。 (2016年6月8日 18時) (レス) id: 9d599423c5 (このIDを非表示/違反報告)
107(プロフ) - あきみゃんさん» ぎゃー！早速ありがとうございます！このコメ返したら即直しますね！ (2015年12月17日 1時) (レス) id: 1080c52a3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：107 | 作成日時：2015年7月23日 0時
