右心房は左心室に恋をしている ページ2
全体的に車内は空いていた。
端の方に彼女を座らせ、少し空けて俺も隣に座った。
「名前、聞いてもいい？」
「あ、Aです」
「Aちゃんね、」
そう言えば、名前も聞いていなかったな。
どんだけ必死なのよ、俺。
どんだけ余裕無いのよ、俺。
自分の惨めさに痛感していたらあっと言う間に目的地に着いた。
ラケットを借りて打ち合いをする。
卓球なんてどれくらいぶりだろう。
最近暇があったら実況ばかり録っていたからな。
こういう日も悪くない、いやむしろとても心地が良い。
「Aちゃんは卓球どれくらいぶりなのー？」
「んー言うて数ヶ月くらいですね」
「そうなんだ、だから上手いんだね」
「たまーに家ではテーブルの上で疑似卓球やっ、た、り、」
急に燃料が切れたように、彼女の手が止まる。
何か思い出している表情をしている。
球がカンカン、と虚しく転がっていく。
「Aちゃん？」
「あ、あ、あ、あ、」
「…ラケット貸して、あっち行こう」
しまった、また思い出させてしまった。
最低だ、元気付けるどころか過去を再び抉るなんて、最低だ。
周りのお客さんが異変に気付いたので、人気のないベンチへと移動させて座る。
「一つ、お願いしてもいいですか」
「どうしたの？」
「腕、貸してください」
「ん、いいよ」
ハっとしたようにバッグからタオルを取り出して俺の腕に抱き付くAちゃん。
気遣ってくれたんだろうな、別にスーツが汚れても構わないのに。
気になるからと言って相手の気持ちを放置して聞きたがるのは、悪質な好奇心だ。
その後すぐに片付けをし、最初の廃れた駅に無事到着。
「あれ、車だったんですか？」
「うん、車で移動しても良かったんだけど、初対面の男の車は嫌かな、と思って電車にした」
「そんな、」
「ただでさえ俺の勝手で今回付き合ってもらったからね」
俺だって初対面の異性の車は嫌だからなぁ。
「…今度は、乗せて頂いてもいいですか」
「あ、ごめん！そういうつもりで言ったわけじゃないよ！ごめんね」
「違うんです」
「え？」
「私が、乗ってみたいんです」
何それ、自惚れていいの。
彼女の心に一歩近付いた気がした俺は、普段絶対取らない行動をする。
「分かった、じゃあこれあげる」
「え、」
「じゃあね、Aちゃん」
雑に書いた連絡先の紙を渡して、電車に乗る彼女を見送った。
***
とりえずTwsideは終わり、とりあえずね
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107(プロフ) - 柚樹@アキちゃん廃。実況廃人の廃人さん» ありがとうございます！後書きにも書いた通り、しばらくTw氏の作品を書くつもりはございません。短編集にはまだTw氏の話が残っているので、良ければそちらもどうぞ〜！ (2015年8月12日 8時) (
レス) id: 97678ed339 (このIDを非表示/違反報告)
柚樹@アキちゃん廃。実況廃人の廃人(プロフ) - 凄い良作…一気に読み終えましたw最初は睡魔と戦っていたのに一話毎の小ネタ(？)に笑い展開やもどかしさに興奮して…すっかり眠気消えましたww面白かったのでTWさんの他の作品があれば見るつもりです！またコメ欄に現れr(素敵な作品ありがとうございました！ (2015年8月12日 1時) (レス) id: b347cf8ab5 (このIDを非表示/違反報告)
107(プロフ) - お腹がいつも空いてる桜吹雪さん» あ、誤字ですか？ありがとうございます、直しておきますね。 (2015年8月1日 1時) (レス) id: 97678ed339 (このIDを非表示/違反報告)
お腹がいつも空いてる桜吹雪(プロフ) - うわぁぁぁぁぁぁぁ！！ 物凄く面白いです！！ つわはす…引退(泣) そう言えばいつもの有線が聞こえない？でしたっけ そのところ仕様かは分かりませんが 緊張居ちゃうしね。 って書いてあったんですが…気になってしまい… 教えてください！！私気になります！← (2015年7月31日 23時) (レス) id: 8bff0a6bf7 (このIDを非表示/違反報告)
なな☆(プロフ) - 107さん» いえ、いいですよ。こんな素敵な小説に出会えただけでも嬉しいですし、お話もして下さって、十分満足です。話変わりますが、完結おめでとう御座います。新作も楽しみに待ってます。これからも短編集等の更新頑張って下さい。 (2015年7月19日 16時) (レス) id: 6f8e57e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：107 | 作成日時：2015年5月20日 21時
