幼馴染に騙されて呪術師になった限界オタク奇譚。【呪術廻戦】

25 オタク奇譚 ページ26

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声を出そうとした。




でも心臓が大きく脈をうってて、体の奥深くから込み上げてくる声も出なかった。



胸が張り裂けそうになり、ただただ彼の眠る姿に頭が痛くなってきたとき誰かの温かい手が私の視界を覆ったのがわかった。







「…硝子、言ってなかったの？」



「……あぁ。言っても、信じられるわけがないだろう」







ごめんな、A。私は君に酷いことをした。



硝子さんのその声に目の奥がツン、と熱くなって──限界だった。
目から溢れ出す涙は五条先生の手を濡らしていく。止まれ止まれと思うほど、虎杖の笑顔が頭の中で反芻されて───それでまた溢れ出してしまう。






「やだッ、やだッ──いたど、りッ、死んじゃっ、」



「うん、うん……僕だって嫌だよ」







もしも此処が2次元だったなら。
死者を蘇らせる人がいて、傷ひとつ残らず綺麗さっぱり元通りになって。

虎杖が元気に生き返って、それで皆んなが笑って────






そんなこと、あるわけないのに。
ただひたすらに五条先生の胸を借りて泣き続けた。私はあの時なにもできなくて、今も泣くことしかできなくて、


きっと誰よりも弱いんだ。






「好きに解剖(バラ)していいよね」



「役立てろよ」



「役立てるよ、誰に言ってんの」







悲しくて、悲しくて。
でも、少しだけよかったと思う自分がいた。

五条先生が視界を覆ってくれたおかげで、私の中の虎杖の顔が笑顔だったから。最後に見た顔が笑顔だったわけではないけれど、それでも私の中の虎杖は笑っている。






「…ねえ、せんせ、い」



「なあに」






「やさしっ─ひ、とって──どうして、っ先に死んじゃうのッ？」







五条先生の手が震えてるのがわかった。
息が詰まったのもわかった。


先生にこんなことを言うのは酷すぎるってわかってたけど、それでも思わずにはいられなかった。







「…A、取り敢えず此処出よ、…………」



「？先生？？」








不自然に途切れた先生の声。


真っ暗な中から聞こえた懐かしい声。


伊地知さんの焦る声に硝子さんの残念そうな声。




どれも、なにがなんだかわからなかった。









「…先生、手どけて」



「あぁごめんごめん。
ほら、感動の再会だよ」









突然入ってきた光が眩しくて暫く目の前が真っ白になる。
何回か瞬きをすると、あり得ない光景がそこにあった。





「…いたど、り？」



「よっす。たでーま！」

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