始まりとエンドロール【短編集】

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「樹、緊張する？」







「するに決まってんじゃん

一番大切な人と一緒になれるとか、まだ信じらんない。



夢の中にいるみたい。」









少し掠れたいつもより真剣な声に、


私の鼓動が足を速めた。









「あは、夢の中みたいだよね、私もさっきそれ思った」









抑えるように少し笑って下を向くと、今日の為にデザインしてもらった澄んだブルーのネイルが儚く光った。









「ね、樹」








「ん？」









ゆっくりと彼の方を見ると、何千回も何万回も見てきた目と、目が合う。




好きで好きで仕方がない。
愛おしい人の目と、目が合う。









「覚えてる？

私がまだ小学生で樹たちが中学に上がった頃、お姉ちゃんにもお母さんたちにも内緒で星を見に行ったの。」







「っふは、懐かしいな、、、
Aが見たい見たいって騒ぐから行ったんだけど、結局曇ってて見えなかったやつでしょ？」






「んふふ、そう。私、今でもたまにあの時の夢を見るの。




夢の中では、雲ひとつない夜空で、見上げるといっぱいに星が輝いてて、




隣にいる樹に、綺麗だね！って話しかけようとする所でいつも目が覚める。」









あの時から何度も何度も同じ夢を見てきたけど、



隣にいる樹の表情は分からないまま、毎回星空だけの思い出を残して目が覚めてしまう。









「そっかー、、また見に行けるといいな」









･







ねぇ樹、きっともう叶わない約束なんて、しないで。








･









どこか自分の中で区切りがついた気がして。









「あのね、樹、」









言いたくても、言えなかった言葉を今なら言えるような気がして。









「うん？」









優しい、大好きな目。









「っ、樹、」





「なに？」









優しい、大好きな声。









今なら言える。









･









「樹、








･








結婚、おめでとう」

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