検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:92,560 hit

ページ6

あの日私が着ている制服を見て、この高校の生徒だと分かったこと。




父親が電話で、私は片親だったらしいと話しているのを聞いたこと。




霊安室での母親と男の子とのやり取りを全て聞いていたということ。









「全てを知って俺は、萩野A、




君だけは守らなければならないと思った






君の母親が小さな男の子を守ったように




まだ若い君を守らなければならないと思った」









空に花が咲く度に、彼の表情が鮮明に映し出された。




先生は、今まで見たことの無いくらい、悲愴で、暗晦で、それでいて強い目をしている。









「、そんなこと信じられません」






先生が言っていることが嘘ではないことくらい分かっているけど、


突然言われても、受け入れられない。








「信じてくれなくてもいい。」




「先生、」





「じゃあ、問題





《今のあなたの望みは何でしょう》」







いつかのような聞きなれた口調で言った。









暗闇に目が慣れ始めた私は、彼の瞳に吸い込まれるように、口を開く。







「あなたを殺して、あの人に私と同じ、大切な人を失う苦しさを知らしめたい。」





突拍子のないことを言っているのに、彼は顔色ひとつ変えない。






「と、思っていたけど、だけど、」






絶対にこうすると決めていても


隣に座ってしまったら


笑顔を見てしまったら


事実を知ってしまったら







「やっぱり、そんなこと出来ません。」






先生の頬から、落ちるように手を離した。







しっかり固めたはずの意志は、
簡単に壊れてしまった。









彼はため息をつくと、こちらに向けていた顔を前に戻した。









「俺は、君のしようとしていたことを間違いだとは思わないよ。否定もしない。」









そして今度は、彼が突拍子のない事を言い始めた。









「あの人は、俺を守りたかったわけじゃない。



俺に、あの事件に関わるなと言ったのは、自分の立場のためだよ。



息子が関わって何かやらかしでもしたら上に見せる顔がないからな。」









そう言った先生は、何かを諦めたように笑った。









「だから親父は俺が死んでも、別に苦しまない。









だけど、息子が自分の学校の生徒と屋上で死んだら、警察の立場としては苦しむだろ。」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (251 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
323人がお気に入り
設定タグ:SixTONES , 松村北斗 , 田中樹
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちーかま - 今更感満載ですが、めちゃめちゃ面白かったです!新作(いずれ、必然)の方も拝見させていただきまして、お恥ずかしながら泣いてしまいました。指輪とエンディミオンと始まりとエンドロールが特に胸がキュッてなりました。作者様の作品はどれも胸に染みますね...!! (2020年11月11日 3時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ストスト - 指輪とエンディミオンの続編とかあったりしますか!?読みたいですー!! (2020年11月7日 17時) (レス) id: 2b49acbbc2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 新作共々お世話になっております!嬉しい褒め言葉ありがとうございます(;_;)お気に入り作者までして頂いたなんて、気合を入れて頑張りますので今後もよろしくお願いします! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ヨモギ文庫さんのいずれ、必然からこの作品を見つけ、読ませていただきました。ヨモギ文庫さんの言葉のチョイスや、表現方法が好きすぎます!笑、新作の更新も楽しみにしています(^^)また、お気に入り作者登録させていただきました!これからも応援しております! (2020年5月9日 5時) (レス) id: cd2866a268 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 夏華さん» コメントありがとうございます。お気に入り作者までして頂けて嬉しいです!これからも夏華さんの性癖グサグサ出来るように頑張ります(;_;) (2020年4月27日 21時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヨモギ文庫 | 作成日時:2020年1月20日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。