指輪とエンディミオン(Jesse) ページ12
「509号室」
手元の液晶には、無機質な文字だけが光っていて、既読だけをつけてスマホをカバンにしまう。
エレベーターを降りて液晶と同じ数字を探し指先を3回壁にぶつけると、
カチャ、と何度も聴いた、部屋に入って良いという同意の音がした。
ドアノブに手をかけるのと同時に乱暴にドアが開けられ、シトラスの香りが私を優しく包み込む。
「会いたかった」
いつもの様に恥ずかしげもなく甘い言葉を囁く彼の胸をそっと押し返す。
「、Aさん？」
「もう、終わりにしよう」
少しだけ、声が震えた。
・
・
3か月前。
友人の結婚式の二次会、ホテルの一角。
高校の同級生の彼女は、2つ歳下でイケメンの彼をゲットしたらしい。
2人はとてもキラキラしていて、あの時の私にはとても眩しくて、
お酒に伸ばす手を簡単に早めた。
「A、大丈夫？」
「ん、ちょっと飲みすぎた、お手洗い行ってくる」
友達に一言告げてから1人で席を立って会場を出て、お手洗いへ向かうが、
慣れない高めのヒールに過剰摂取したアルコールのダブルパンチで足元がおぼつかない。
「っわ、」
「おっ、と、大丈夫ですか？」
例のごとく大胆に転びそうになった私を、見上げるほど背の高い赤髪の男性の大きな手が支えた。
「あ、すみませ、」
「新婦さんのお友達ですよね？俺新郎側の参列者なんですけど、、トイレ？」
新郎側なら、歳下？
歳下に介抱されるなんて、不甲斐なさすぎる。
「そうです、けど大丈夫です自分で行けるので」
「いや、大丈夫じゃないでしょ、一緒に行きますよ」
早くこの場から逃げ出したくて早口で言った私を気にもせず、当たり前のように手を取って歩き出した。
「あの、だから大丈夫、」
「しんどいでしょ、抱っこの方がいい？」
「え、いやです」
「あはは！いやってハッキリ言われた！」
「声大きい、、」
なんで歳下にタメ口きかれてからかわれてるんだろう。
申し訳なさと不甲斐なさを抱えたまま、何とかお手洗いまでたどり着いた。
「はい、さすがにここから先は行けないから、行ってらっしゃい」
「、ありがとう」
なんだか楽しそうにヒラヒラと手を振る彼に背を向けてお手洗いに入る。
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ちーかま - 今更感満載ですが、めちゃめちゃ面白かったです！新作(いずれ、必然)の方も拝見させていただきまして、お恥ずかしながら泣いてしまいました。指輪とエンディミオンと始まりとエンドロールが特に胸がキュッてなりました。作者様の作品はどれも胸に染みますね...！！ (2020年11月11日 3時) (
レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ストスト - 指輪とエンディミオンの続編とかあったりしますか！？読みたいですー！！ (2020年11月7日 17時) (レス) id: 2b49acbbc2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 新作共々お世話になっております！嬉しい褒め言葉ありがとうございます(;_;)お気に入り作者までして頂いたなんて、気合を入れて頑張りますので今後もよろしくお願いします！ (2020年5月9日 8時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ヨモギ文庫さんのいずれ、必然からこの作品を見つけ、読ませていただきました。ヨモギ文庫さんの言葉のチョイスや、表現方法が好きすぎます！笑、新作の更新も楽しみにしています(^^)また、お気に入り作者登録させていただきました！これからも応援しております！ (2020年5月9日 5時) (レス) id: cd2866a268 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 夏華さん» コメントありがとうございます。お気に入り作者までして頂けて嬉しいです！これからも夏華さんの性癖グサグサ出来るように頑張ります(;_;) (2020年4月27日 21時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年1月20日 23時
