“ちょうど良い幸せ” ページ9
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大人の男性に勝てるはずが無いのは分かっていながらも、必死で抵抗していると物音に気づいたのか母が部屋のドアを開けた。
恐怖とか痛いとか気持ち悪いとか、そんなものより1番に脳を支配したのは「お母さんが可哀想」だった。
一瞬、何が起こっているか分からない、と言うような顔をした母も、我に返ったのか慌ててあの人を私から引き剥がして部屋を出て行った。
パタン、とドアが閉まって静かになった部屋で、触られたところをひたすら拭ったけど、やっぱり気持ち悪い。悔しくて、少しだけ涙が出た。
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扉越しにも聞こえてくる、リビングに行ったであろう2人の声は冷静な大人のものではなくて、当事者でないはずの私の鼓動まで早くなる。
声が聞こえなくなってしばらくしてからそこへ向かうと、母が椅子に腰かけて泣いていた。
「お母さん」
と声をかけると、顔を上げた母は何故か
「A、ごめんね」
と笑った。
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母のかわりに私が朝食を作っている間は2人とも無言で、テーブルにお皿を並べて食べ始めようとすると母が口を開いた。
「Aがいるだけで幸せだったのに…更に上を求めてしまったからこうなったのかな」
母は私に目を向けているけど、見ているのは違う誰かみたいで。
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「ちょうど良い幸せで止めておけばよかった」
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全てが過去形なのは、今の幸せではもう物足りないということ？
1度それ以上の幸せを経験してしまったら、幸せだったはずの過去は愛せなくなってしまうの？
ちょうど良い幸せって、何？
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疑問を全てぶつけてしまいたかったけれど、母の顔を見てしまったら何も言うことは出来なかった。
あの人は他にも女がいたらしいと話す母はいつもの母なのに違う誰かみたいで、せっかく作った朝ごはんの味は全く分からない。
ただ、私といるだけではもう母は幸せになれないのだろうかと、答えが出ないことを考えた。
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fm - すごく引き込まれる文章、物語の構成でした。言葉選びも素敵であっという間に一気読みしました。高校生の頃のあの、焦ったい青春を思い出すことができました。ありがとうございました。 (2022年2月6日 11時) (
レス) @page49 id: fa24b69ff2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - yanchahime3014さん» 初めまして！青い鳥まで来てくださって嬉しいです、ありがとうございます。優しいコメントをくださる主様が来世こそは｢好きで悪いかぁ｣されますように。 (2020年6月29日 22時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
yanchahime3014(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読ませていただきました。そして、青い鳥のフォロー申請させていただきました。切なかったけど、幸せになってくれて本当に良かった。私も「好きで悪いかぁ」ってされたい人生でした。 (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7c22139847 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 始まりとエンドロールにもコメントを下さってありがとうございました！泣いてしまっただなんて…しかも2週もして下さったなんて…もっとしちゃって下さい！(厚かましい)今後も楽しんでいただけるように頑張ります！ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 杏奈さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！おお！そのセリフがあってこそのこのお話だと思うので気付いて頂けて嬉しいです。もう少しですが是非お付き合い下さい！^^ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年5月5日 13時
