財産害虫 ページ8
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「A、ごめんね」
何故か笑顔で「大丈夫」と言ってしまったのは、母が無理して笑っていたからだろうか。
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7月下旬、夏休みが始まる前日。今日の空は曇天で、まだ昼だというのに外は暗い。
雨や曇りの日に昼から廊下の電気が着いている学校の雰囲気は、何となく落ち着かない気がして苦手だ。
いつものように授業を受けるけれど、窓から見える空はげんなりとしたねずみ色、グラウンドはポツポツと水玉が増えるばかりでなんの変化もないため暇つぶしが無い私は仕方なく教科書を開く。
先生の話に耳を傾けようにも、普段やっていないことを突然出来るはずもなく、やはり考えてしまうのは朝の母の顔だ。
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幼い頃に父を亡くし、私を女手一つで育ててくれた母が3ヶ月前に連れてきたのは、無精髭を生やした40代半ばの男性。
前日の夜「お母さんの好きな人連れてきてもいい？」と言われた時以上の驚きはなかったけれど、この人がお母さんの好きな人、と口の中で反芻すると少しだけ変な感じがした。
「好きな人」というだけで「新しいお父さん」と言われた事は無かったから、私も変に意識することなく生活していた。
その人は一緒に住んでいるわけではなくて、週に2.3回家に来て一緒にご飯を食べた。泊まっていくこともあったけれど、次の日の朝になるともう居ないことが多かったから、きっと仕事にでも言っているのだろうなと何となく思っていた。
高校生の女子が“母が連れてきた知らない男性”というだけで勝手に抱いていた理不尽な不信感が明確な意味を持つ物に変わったのは今朝。
前日の夜はあの人が来て泊まっていたけれど、寝る部屋は違うしほとんど話すことも無く、私もいつも通りベッドに入り目を閉じた。
アラームが鳴っていなかったから起きるにはまだ早い頃、太腿に違和感を感じて目を開けるとそこにいたのはあの人。反射的に手で振り払うとニヤリと気味悪く笑って再び布団の中に手を入れてくる。
あぁ、こういう時の人間は本当に声が出ないものなんだ。と初めて実感した。
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fm - すごく引き込まれる文章、物語の構成でした。言葉選びも素敵であっという間に一気読みしました。高校生の頃のあの、焦ったい青春を思い出すことができました。ありがとうございました。 (2022年2月6日 11時) (
レス) @page49 id: fa24b69ff2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - yanchahime3014さん» 初めまして！青い鳥まで来てくださって嬉しいです、ありがとうございます。優しいコメントをくださる主様が来世こそは｢好きで悪いかぁ｣されますように。 (2020年6月29日 22時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
yanchahime3014(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読ませていただきました。そして、青い鳥のフォロー申請させていただきました。切なかったけど、幸せになってくれて本当に良かった。私も「好きで悪いかぁ」ってされたい人生でした。 (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7c22139847 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 始まりとエンドロールにもコメントを下さってありがとうございました！泣いてしまっただなんて…しかも2週もして下さったなんて…もっとしちゃって下さい！(厚かましい)今後も楽しんでいただけるように頑張ります！ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 杏奈さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！おお！そのセリフがあってこそのこのお話だと思うので気付いて頂けて嬉しいです。もう少しですが是非お付き合い下さい！^^ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年5月5日 13時
