タイムスリップ ページ26
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扉を開けると一斉に集まる視線。
「久々！」
「真宮達来たから揃ったんじゃね？」
見渡せば、皆変化はあるものの面影はあって、高校時代を簡単に思い出させた。
その途中で、北斗と目が、合う。
窓が無いのに、風が吹いたような、
ただの居酒屋なのに、予鈴が聞こえてくるような、
そんな感覚に陥る。
仕事終わりだろうか、腕まくりされたワイシャツにネクタイは軽く緩められていて
確実に大人になっているはずなのに、その姿が、6年前と重なった。
「…久しぶり」
「久し、ぶり」
まさか北斗から声をかけてくれるなんて思っていなかったから、少しぎこちなくなってしまった。
6年ぶりに私を捉えたその目は、やっぱり何を考えているのか分からない。
きっともう北斗にとってあの頃の記憶なんて、他の思い出の中に埋もれて、見つけ出す事が難しいくらい奥底で眠ってしまっているんだろうな。
「はいもう座って〜、全員揃ったし早く飲もう！」
ジェシーの声で我に返って、適当に空いている席を探し、ジェシーの隣、北斗とは少し離れたところに座った。
「A何飲む？？」
「みんなもう決まってるの？」
「俺らはもう頼んであるから」
気を利かせたジェシーがメニュー表を手渡してくれる。
とりあえずビール、と言いたい所だけど生憎私は炭酸が得意ではない。
「ん、カシスオレンジでもいい？」
「ルイスジェシー？」
「ん？ごめん耳栓してた」
「だっは！北斗〜Aが耳栓してくる！」
「何？聞こえないんだけど」
「なぁんでよ！お前もかよ！」
ジェシーが突然北斗に振るからドキッとしたけど、平然とノリ返して来て少し安堵していると、
「北斗と真宮さんくらいだよ、ジェシーに対応出来んの」
隣に座っていた町田くんが呆れたように笑った。
「なあんでよ町田！お前にも出来んだろ！」
ふざけ倒しているジェシーは放っておいて北斗の様子をちらっと伺うと「うるせぇな」と笑いながら取り皿を配っている。
意識しないうちに気遣いをしている所、変わらない。
あの時先生に当てられた私を助けてくれたのだって、きっと無意識のうちで。
話さなくなったまま卒業して6年、当たり前に変わってしまった所もあるんだろうけれど、根本の優しい部分が変わっていない彼を知って煩くなる胸に、私の気持ちも6年前のままだと改めて気付かされた。
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fm - すごく引き込まれる文章、物語の構成でした。言葉選びも素敵であっという間に一気読みしました。高校生の頃のあの、焦ったい青春を思い出すことができました。ありがとうございました。 (2022年2月6日 11時) (
レス) @page49 id: fa24b69ff2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - yanchahime3014さん» 初めまして！青い鳥まで来てくださって嬉しいです、ありがとうございます。優しいコメントをくださる主様が来世こそは｢好きで悪いかぁ｣されますように。 (2020年6月29日 22時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
yanchahime3014(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読ませていただきました。そして、青い鳥のフォロー申請させていただきました。切なかったけど、幸せになってくれて本当に良かった。私も「好きで悪いかぁ」ってされたい人生でした。 (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7c22139847 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 始まりとエンドロールにもコメントを下さってありがとうございました！泣いてしまっただなんて…しかも2週もして下さったなんて…もっとしちゃって下さい！(厚かましい)今後も楽しんでいただけるように頑張ります！ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 杏奈さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！おお！そのセリフがあってこそのこのお話だと思うので気付いて頂けて嬉しいです。もう少しですが是非お付き合い下さい！^^ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年5月5日 13時
