交わらない ページ22
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どれくらいそうしていたのだろうか。
「真宮おはよー」
周りがガヤガヤとし始めたから、だいぶ時間が経ったことが分かる。
「どうした？」
「ああ、おはよ」
クラスメイトに声をかけられて我に返り、皆と同じように上靴に履き替えて教室へ向かう。
教室へ入って1番にあの席へ目線をやってしまったけれど、それは一方的で、もう二つが交わることは無いのだろうかと考えて勝手に胸が痛む。
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「やっぱ松村くん、なんか変だよね」
一緒に勉強しようと2人で残った放課後の教室。
沙絵は長い指でシャーペンを持ってスラスラと動かしていた手を止めて、突然口を開いた。
「…そうだね」
「でもジェシーと話す時は普通なの。Aが話題に出ると急に難しい顔になる」
「なんでだろ｣と眉を顰める彼女を脇目に何度も何度も思い出してしまうのは、最後に会った花火大会のあの瞬間と、今朝の冷たい声。
だけど“それ”をしてきたのは北斗の方からで、私は何も言っていないし何もしていない…はず。
“何かをしてしまった”という自覚がないのにも関わらず向けられる嫌悪感ほど、若い心を煩わせるものは無いと思う。
「…私、気付かないうちに北斗が嫌がるような事しちゃったのかもしれない」
少し声が掠れて、ノートにポタ、と水滴が落ちた。
分からない。教えて欲しい。もし何かしてしまったのなら謝りたいし、何より北斗と喋りたい。
あのキスだって、勘違いだとか気の迷いだとか言われたって全然良い。北斗と話せるなら、それでいいのに。
だけどそれさえも拒絶されてしまうのが怖くて、弱い私はもう話しかけるのを諦めることしか出来ない。
「っ…」
「A、」
沙絵に名前を呼ばれて顔を上げると、彼女の視線は私の後ろ。
それを追うように振り向くと、扉の近くには北斗が立っていた。
ずっと北斗の視界に映りたかったはずなのに、今は何を思っているのか分からないその瞳に捕えられるのが怖い。
「っ沙絵ごめん、先帰る」
机の上の物を急いでカバンに片付けると下を向いて彼の隣を通り過ぎる。
一瞬だけ鼻を掠めた香りはもうあの時の柔軟剤とは違うもので、全て変わってしまったんだと悟った。
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fm - すごく引き込まれる文章、物語の構成でした。言葉選びも素敵であっという間に一気読みしました。高校生の頃のあの、焦ったい青春を思い出すことができました。ありがとうございました。 (2022年2月6日 11時) (
レス) @page49 id: fa24b69ff2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - yanchahime3014さん» 初めまして！青い鳥まで来てくださって嬉しいです、ありがとうございます。優しいコメントをくださる主様が来世こそは｢好きで悪いかぁ｣されますように。 (2020年6月29日 22時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
yanchahime3014(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読ませていただきました。そして、青い鳥のフォロー申請させていただきました。切なかったけど、幸せになってくれて本当に良かった。私も「好きで悪いかぁ」ってされたい人生でした。 (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7c22139847 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 始まりとエンドロールにもコメントを下さってありがとうございました！泣いてしまっただなんて…しかも2週もして下さったなんて…もっとしちゃって下さい！(厚かましい)今後も楽しんでいただけるように頑張ります！ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 杏奈さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！おお！そのセリフがあってこそのこのお話だと思うので気付いて頂けて嬉しいです。もう少しですが是非お付き合い下さい！^^ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年5月5日 13時
