快速 ページ20
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駅まで向かうには屋台のある道を通らなければならなくて、私達はまた人混みの中に入るけど、喧騒の中鼓膜に響くのは2人の下駄がカラカラと奏でる音。
北斗は何がしたかったんだろう。あの後何も言わずに食べた物を片付けると私の手首を掴んで歩き出すから、私は何も言えずについて行くしか無かった。
掴まれているのが手のひらでは無いのは、やっぱりただの友達だから？
いや、でもただの友達にキスをするような人ではないよな。
考え込んだり、数分前を思い出して顔が熱くなっている今の私の唯一の救いは、彼が振り向かない事だ。
置いていかれないように小走りになっていた私に気がついたのか急にスピードをゆるめた北斗は、改札を少し避けた所に立ち止まるとガシガシと頭をかいて「悪い」と私から目を逸らす。
何に対して謝っているのかは分からないけれど。
なんで今日、誘ってくれたの？
優しくしてくれるのはどうして？
なんで何も話さないの？
さっきのキスは、何？
全て聞いてしまえたらどんなに楽だろうか。
正直に今の気持ちを言えたらどんなに楽だろうか。
それでも口を開こうとすると、思い出すのは母親の言葉。
━━ちょうどいい幸せで止めておけばよかった
今私が今一瞬楽になるために全てを言ってしまったら、もうこの関係は無くなってしまうかもしれない。
それなら、“今以上”なんていらないから。
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「…北斗、またね」
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少し声が震えたけれど、何も言わない北斗に私が言える1番正しい言葉は、これだ。
ぎこちなくなってしまったかもしれないけど笑って手を振ると
「A、」
足を進めようとした私を北斗の声が呼び止める。
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「考えといて」
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それだけ言うと「じゃあ」と手をあげた北斗は私に背を向けた。
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主語が無いもののさっきの出来事から連想されるのは、きっと「そういう事」で。
改札に入り私達が乗った電車は、お互い別々の方向へと走りだす。
ただ帰る場所が違うだけなのに、北斗が遠くへ行ってしまうような気がして下唇を噛んだ。
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北斗から連絡が来ないままあっという間に夏休みは終わり、新学期を迎えた9月。
何故か、彼が前のように私に話しかけてくる事は全く無くなった。
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fm - すごく引き込まれる文章、物語の構成でした。言葉選びも素敵であっという間に一気読みしました。高校生の頃のあの、焦ったい青春を思い出すことができました。ありがとうございました。 (2022年2月6日 11時) (
レス) @page49 id: fa24b69ff2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - yanchahime3014さん» 初めまして！青い鳥まで来てくださって嬉しいです、ありがとうございます。優しいコメントをくださる主様が来世こそは｢好きで悪いかぁ｣されますように。 (2020年6月29日 22時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
yanchahime3014(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読ませていただきました。そして、青い鳥のフォロー申請させていただきました。切なかったけど、幸せになってくれて本当に良かった。私も「好きで悪いかぁ」ってされたい人生でした。 (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7c22139847 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 始まりとエンドロールにもコメントを下さってありがとうございました！泣いてしまっただなんて…しかも2週もして下さったなんて…もっとしちゃって下さい！(厚かましい)今後も楽しんでいただけるように頑張ります！ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 杏奈さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！おお！そのセリフがあってこそのこのお話だと思うので気付いて頂けて嬉しいです。もう少しですが是非お付き合い下さい！^^ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年5月5日 13時
