ホットパイン ページ18
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「なにここ…」
屋台のガヤガヤとした人混みを抜けてしばらく歩くと、立ち止まったのは広い橋の上。
「穴場スポット」
「へぇ…」
周りを見てみるとぱらぱらと近所の方らしい家族やご夫婦がいるから、きっと本当に良く見える場所なんだろう。
「俺が小さい頃親父がよく連れてきてくれたの」
楽しい思い出を振り返っているはずの言葉なのに、声色に硬さと違和感を感じる。
「…北斗？」
「ん？」
「…ううん。座ろ、お腹空いちゃった」
どこか憂いを帯びている気がした北斗の表情は気にしないことにして、縁石に腰かける
やっと食べられる！いただきまーす！とパインを口に運ぶけど、言わずもがな“冷やし”なんて言えなくなったそれに少しだけ落胆する。
「温くなってた？」
「…うん」
あまりにも私が残念そうに言ったからか「そりゃ残念」と笑った北斗の肩が少し触れて、勝手に意識する。
「ん、食いな、これまだ温かいよ」
まだ楽しそうに肩を揺らしている北斗が差し出してくれたのはたこ焼き。
「いいの？」
「いいもなにも、食べたかったんでしょ？」
ほら、と爪楊枝を指してくれる北斗に、私が食べたいと言ったから並んで買ってくれたんだと気付く。
狡い、こういう所だ。これ以上は望まないと何度も言い聞かせても未来を見ようとしてしまうのは、もはや北斗が悪い。北斗のせいだ。
「何、食わないの？」
「なら俺が先に食べる」と引っ込んでしまったたこ焼きを急いで取り戻そうと北斗の手を引っ張ると、思った以上に力が入って2人の距離がぐっと近づいた。
長い睫毛が、揺れる。
鼻と鼻が触れてしまいそうなくらいの距離に驚いて一瞬固まると、ドーン、と一発目の花火が北斗の肌を彩った。
我に返った私は急いで彼から離れて、「くれないならいい」と可愛くない事を言ってベビーカステラを頬張る。
「1人じゃこんな食えないから食べてくださーい」
いつもと変わらずそう言う北斗に、やっぱりただの友達としか思われていないんだなと改めて突きつけられたようで少し泣きそうになる。
半ばやけくそに北斗の手からたこ焼きを奪って、1つ口の中に放り込む。
「美味いでしょ？」
「…ん、美味しい」
悔しいけどもちろんたこ焼きは美味しい。多分北斗が買ってくれたから、普通のたこ焼きよりずっと美味しい。
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fm - すごく引き込まれる文章、物語の構成でした。言葉選びも素敵であっという間に一気読みしました。高校生の頃のあの、焦ったい青春を思い出すことができました。ありがとうございました。 (2022年2月6日 11時) (
レス) @page49 id: fa24b69ff2 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - yanchahime3014さん» 初めまして！青い鳥まで来てくださって嬉しいです、ありがとうございます。優しいコメントをくださる主様が来世こそは｢好きで悪いかぁ｣されますように。 (2020年6月29日 22時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
yanchahime3014(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読ませていただきました。そして、青い鳥のフォロー申請させていただきました。切なかったけど、幸せになってくれて本当に良かった。私も「好きで悪いかぁ」ってされたい人生でした。 (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7c22139847 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - しろくまさん» 始まりとエンドロールにもコメントを下さってありがとうございました！泣いてしまっただなんて…しかも2週もして下さったなんて…もっとしちゃって下さい！(厚かましい)今後も楽しんでいただけるように頑張ります！ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ文庫(プロフ) - 杏奈さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！おお！そのセリフがあってこそのこのお話だと思うので気付いて頂けて嬉しいです。もう少しですが是非お付き合い下さい！^^ (2020年6月3日 0時) (レス) id: 787b8d528e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨモギ文庫 | 作成日時：2020年5月5日 13時
