天然タラシだよ？安吾さん!!その６

Morte alla Francia ltalia anela!! ページ12

｢あの…｣

｢なんだ？｣

｢………｣

“やっぱりなんでもない”とつい口を噤んでしまいそうになる。

身分を隠さねばならない特務課として素人ぶりたい気持ちは中々拭えない。

しかし、早々にいや、と思い直す。

今は気持ちを競り合わせている場合だろうか。

この状況からエージェントとしての勘を無視する方が罪じゃないのか。

そう。

防げる惨事を進んで防がないエージェントなどいてたまるか。

そんなプライドによって、言葉は重い腰を上げ喉から浮上した。

｢…この銃…何か変な感じがするんです｣

｢…あ？｣

……気のせいならいい。

それに越したことはない。

とはいえ今まで散々素人ぶってしまった私の言葉がどこまで効くのかはわからない。

｢……弾を調べてみた方がいいと思います｣

それでも聞き入れてもらわねばならない、と一生懸命に張り詰めた顔をする。

……すると

｢…ん、じゃあ見てみるか｣

それが功を奏したのかはよくわからない。

だが兎に角青年は案外あっさりと受諾した。

そうなるとなんだか急に思い詰めた割に一方的に肩透かしを食らった気がして

｢……信じるんですか｣

｢あー…まぁ、他人の銃なら弾のチェックは必要だしな｣

……何故か急にあちらもごにょごにょとし始めた。

そこから更に妙な恥じらいを応酬し合う。

そんなわけのわからないむず痒い空気も束の間だった。

――――先程の嫌な予感は間違いではなかった。

気を取り直した青年が慣れた手付きでシリンダーをスイングアウトするも弾は一つも落ちてこない。

この時点で眉間に皺を寄せ始めた青年は今度は銃を軽く振ってみる。

しかし、矢張りうんともすんともいわない。

弾はおろか薬莢一つ落ちてこない。

おかしい。

嫌な汗が背中を伝う。

青年は忽ち血相を変え革手袋の長い指がブルブルするほどエジェクター・ロッドを力一杯押しているが強制排莢もされないのだ。

耐えかねた私達はついにシリンダーを覗き込んだ。

｢これは…｣

｢あぁ…。こいつは薬莢でも普通の弾でもねぇ…｣

シリンダーの中に“へばりついていた”それは異様であった。

おそらくは古い薬莢でリロードしたものを更に破裂寸前まで膨らませたもの。

酷いものは微かな隙間から火薬がパラパラ音を立てている。

｢おいテメェ。一度でも引き金を引いたか？｣

青年は脱力のまま未だ地を舐めている男へ問う。

閑話…１１月１１日→←Morte alla Francia ltalia anela!!

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