自由な枷 ページ2
一瞬、耳が常務を放棄した。
「………は?ではその健康への揺るぎない自信はどこからやってくるのですか」
「自信といいますか、事故に巻き込まれ怪我をする事はあっても病による入院は一度もありませんのでね」
…………駄目だ、この人。
「…………わかりました。帰ったら健康診断を繁忙期からずらす案を上に通します。えぇ必ず。」
「………………」
彼の無言の抵抗は折角治りかけた目の奥をツンと疼かせ、神経は大いに波打った。
まさかここにきて上司が頭痛の種になるとは夢にも思わなかった。
嗚呼、話題を変えよう。
「ところで、そちらの紙袋は?」
「……あぁ、退院の前祝いにと思いまして」
「前祝い?」
彼は紙袋をひょいと目の前に掲げる。
その拍子に私はとんでもない物を見てしまった。
「……恐ろしいロゴが刻まれていますね」
「えぇ。女性の夢と憧れの詰まったとびきりの」
気付かなければ良かったと、今度は胃がシクシクし始めた。
「私、そんな高価な物、受け取れませんよ」
「貴女が受け取らないならゴミ箱に行くだけです。ネットに流す暇もないのでね」
「……それ、狡いです」
「悪しからず。僕はそれだけ貴女の過労を重く受け止めたということです。やはりキャリアはキャリアらしい毅然とした仕事に集中するべきだとも考えました」
「……それで?」
「まずはノンキャリアとの明確な差をつけましょう。例えば服装。幸い貴女の活躍が広告塔のような役割を果たしたおかげで女性の新人が増えました。良い機会でしょう。雑用はもう彼女達の仕事です」
「……私は反対です。彼女達が雑務に押し潰され、学びの機会や出世のチャンスに響いてしまったらと考えると……やりきれません」
「しかし貴女は独りでその全てをこなし立派に出世なさった」
「でも、新人さんは私ではない」
「そこは我々で上手く育てるのです。彼女らには“雑用は分担させること”を最初に教えるつもりです」
私が思わず閉口すると紙袋からするり出された箱は蓋を開かれ、彼のエスコートにより中身がコツコツと並んで床に鎮座した。
「……何センチですか」
「足が綺麗に見えるよう七センチで勘弁しておきました」
「もう、自分がこんな靴を履かないからって気楽に…。戦闘任務の時には履き替えますよ」
「勿論どうぞ」
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桐 - おぉ早い!ありがとうございます<(_ _*)> (2017年12月27日 23時) (レス) id: 04a457cb17 (このIDを非表示/違反報告)
kyyk(プロフ) - 桐さん» 桐さんへ
リクエストありがとうございます!
クリスマスもいよいよ本番ですね(*´∀`*)Merry Christmas! (2017年12月25日 0時) (携帯から) (レス) id: 528c1861fb (このIDを非表示/違反報告)
桐 - リクエストです!カレンダーと安吾さんを絡めて欲しいです(゜-゜)(。_。)いつも楽しく読んでます。これからも頑張ってください!応援していますo(^-^o)(o^-^)o (2017年12月24日 20時) (レス) id: 04a457cb17 (このIDを非表示/違反報告)
kyyk(プロフ) - 夜桜 暁さん» 夜桜 暁さんへ…コメントありがとうございます(・ω・)ゝ最近中々頭が働かないので地道に地道に更新ネタを考える日々です。
それでも見放さずに応援してくださる温かい言葉にとても支えられております(´;ω;`)ありがとうございます!! (2017年11月11日 18時) (携帯から) (レス) id: 528c1861fb (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 暁 - この作品が大好きです!ずっと前から、応援させて頂いてます。これからも頑張って下さい。コメント失礼致しました。 (2017年11月4日 5時) (レス) id: c5e0ba92a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyyk | 作成日時:2017年5月3日 12時