焼却を望む画家 (ページ7)

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七話ページ7

先程と同じように紫の炎に包み込むと暴走していたルティフィの覚醒した家系能力が徐々に落ち着いていく。漆黒にのみ彩られた瞳も紫炎に染められた純白が再び浮かび上がる。だが、元祖返り特有の沈みすぎた目はそのままだ。
完全に元祖返りとして目覚めてしまったから、悪周期から開放されることは無い。ならば、彼女の悪周期から呼び起こさせる抑えの効かない欲に枷をつけて制御し、その矛先を決して他に向かないようになければならない。
何より、妻が他の悪魔を見るなんて許せない。

「ルティフィ、僕の妻、僕の声が聞こえる？」

『…………だ、んな様？』

「うん、キミの旦那様だよ」

『わたしは、なにを？』

「……少しの間気絶していたんだ」

『きぜつ……。もうしわけありません、おみぐるしいところをおみせしました』

「気にする必要は無いよ」

まるで寝起きのように舌足らずで話すルティフィに思わず、胸がキュンキュンしてしまうのを隠せないエイト。だが、今はそれをすべきではないと己を律し、そっと優しく頭を撫でながら言葉を紡ぐ。ここで間違えたら、ルティフィは他の元祖返りと同じように忌み嫌われる存在になってしまう。

「あ、そうだ。キミのこと、ティフィって呼んでもいい？僕だけが呼んでいい、キミの愛称」

『だんなさまがよろこばれるのでしたら、わたしはどんなよびかたでもかまいません』

「ありがとう。……さっきの続きをしよう」

『はい』

「”キミ”は、”炎”に燃やされたいんだね」

『……いぜんまでのわたしなら、そうでした。でも、いまはちがいます。”わたし”は、”だんなさまのほのお”にもやされたいのです』

漆黒に紫紺のハートが浮かび上がる。
エイトは”それ”が元祖返りになった彼女を突き動かす”全て”だと確認し、彼女にとって最も重い枷となる言霊という縛りを施す。

「なら、もっと努力しなさい」

『……努力？』

「あぁ、今のままじゃ全然足りない。もっともっと僕に愛されるように、キミ自信を磨くんだ。もちろん、今のままでもキミは充分魅力的だし、僕はもう既にキミに夢中になっている。
でも、それだけだ。キミを燃やしたいとは思わない」

『……っ』

「もっと僕を魅了してくれ。僕を夢中にさせてくれ。そうしたら、いつか必ず。キミの全てを僕の炎で燃やし尽くしてあげる」

その時のルティフィの笑顔は決して忘れることは無いだろう。無垢で無邪気に、ただ純粋に嬉しいという感情だけを詰め込んだ満面の笑みを。