四話 ページ4
結局、あれよこれよと反論の余地も与えられずにエイトはお見合いの場所として選ばれた高級料亭に連れてこられていた。納得のいっていないエイトは顔には出てないが、嫌だというのが雰囲気で分かる。その様子に思わずため息をこぼしてしまう父だったが、ほんの数秒後、息子と娘(仮)が恋に落ちる瞬間を目撃してしまう。
襖が開かれ、眩しいキンキラキンの髪を持った御老人に続いて、何もかもが純白に包まれた美少女が入ってくる。伏せられていた顔が上がり、角の飾りがシャラシャラと柔らかい音を奏でると同時に、その瞬間、全ての時が止まった。
見た目年齢は五歳かそこらの子供。だというのに感じられるオーラは見た目通りの無垢であるというのにどこか妖艶だ。目と目が合い、写真ではなく直に向けられる漆黒の中に浮かぶ純白に目を奪われ、あの時の欲がぶり返す。尾の炎が本能を抑えるために天井に届くまで燃え盛る。
だが、必死に本能を押さえつけようとしたこの行動は全て無意味に終わった。浮かぶ純白が自分の紫炎を写して、紫紺に染め上げる。
隣で父達が何か言っているが、エイトには何一つ届かなかった。目の前の美しく可憐で儚い純白の美少女に魅了される。写真なら、まだよかったのだ。目をそらせば、写真を裏返したり隠せばいいのだから。けど、実物はダメだ、そらせないし、隠せない。
一度視界に入れてしまえば、捕らわれてどこまでも堕ちていく。理性という理性があっさり崩れ去り、純白の美少女、いづれ妻となる少女を囲い込んで、自分以外決して見えないようにしてしまいたい。
ーー彼らは悪魔である。
『燃やされたい……!!』/「(染め上げたい……!!)」
純白をもっと自分色に染め上げたい。
自分だけの宝にして、誰も近寄れないようにしたい。
目の前の美少女の頬が赤く染まり、目がとろんと蕩けて、漆黒の中に紫紺のハートが浮かぶ様に興奮する。
抑えられず溢れた”妻”の自分を求める欲を焦らして焦らして焦らし続けて、必死になる姿を一番近くで眺めていたい。
きっと、求める自分のためなら”妻”はどこまでも、どこまででも自分色に染まっていくと確信できる。
そんな欲が、考えるより先に体を突き動かした。
ーー悪魔は欲に忠実で、欲しいものを手に入れる為ならばどんな事でもしてみせる。
制御しきれなくなった激しい紫の炎が、純白の美少女を包み込む。
52人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し - めちゃくちゃ好きです!!!!!!!!!!!!!更新頑張ってください! (4月28日 11時) (レス) id: fc92663274 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:暇潰し | 作成日時:2024年3月10日 22時