泥棒は攫った。 ページ29
「ちょっと待とう。」
君いくら何でも冷静過ぎじゃあないか？と諸伏さんの言葉に私は思考する。
あの時は、なんていうか自分なりに脱出とアメリカからどう逃げるべきか必死に思考してたから、決して冷静じゃなかったんだけど…。
『なんですかね…至って冷静じゃなかったとは思いますよ？当時はまだ名もなきスケーターの様なものだったし…下手に動いたら社会から消されそうだった訳ですよ？』
冷静でいる訳がない。でも考えるしか私にはなかった。
だから考えていた。
『どうやって逃げてやろうかなって？』
思った以上に震えた声色はあの時感じた“絶望”を振り返るそれだ。
どうやって日本に逃げればいい？船？飛行機？
頼りはない。
兄は日本で闘ってる…そんな彼を頼るなんて出来ない事位、“知ってる”私が出来るはずがなかった。
『国境を超える手段はどれも公認…とてもじゃないけれどアッチが一声掛けたら私なんてあっという間に国際手配されて捕まってしまう。』
そんな状況で冷静でいられる訳がない。
それでも、死んでなんてやれないとは思った。
当たり前だ。だって私はまだ“スタートライン(夢を叶える段階)”にすら立てていなかったのだから…
『“夢を託された身”だから、死んでなんてやれないでしょう？』
スケートは好きだ。
そこは変わらない…でも氷上で輝いていたあの子(亡くなった友人)の夢を、私は託された身だった。
それが、私が出来る友人への手向けだと想ってるから…
だからといって誰かに頼る事も…“助けて”と告げる事も出来ないあんな状況を。
『窓を割ったのは、次元おじ様だったよ…』
私と奴の床を叩き斬ったのは五右衛門様。
浮遊感に襲われてビルから落ちたのは分かって、正直死んだと思ったよね？
『でも、そうさせなかったのはルパン三世…彼だった。』
あの人は私を“攫った”の。
ヘリで爽快に現れて、私を空中キャッチとか何？人間技じゃない…
『それから、潰れそうだった私を見兼ねてショッピングに連れ出したのは不二子姉様。』
体術は兄様に教わっていてなんの問題も無かった。
礼儀作法も家族に叩き込まれていた。
じゃあ今度は誰も教えちゃくれない事を教えちゃう！なんてお茶目に笑った彼に、強ばって色んなモノに蝕まれていた私の心を軽くし、今に至るまで成長させたのはルパン達だった。
彼等は泥棒だけど
『戻してくれた…』
彼等は私の心を拾って戻してくれた…そんな事してねぇと彼等は笑うんだろうな…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
明里香(プロフ) - 設定に誤字がありました。「家計」ではなく、「家系」です。 (2020年1月18日 23時) (携帯から) (
レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
喜怒哀楽(プロフ) - 玲乃音さん» 玲乃音様コメント有難うございます！アウトドア派な兄とは真逆のインドア派であったが為の遭遇…知り合いだと最近思い出す妹ちゃんです…有難うございます！精進致します。 (2020年1月15日 20時) (レス) id: 65bce10cce (このIDを非表示/違反報告)
玲乃音(プロフ) - まさか……夢主達とジンは知り合い説…続き楽しみに待ってます (2020年1月15日 19時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
喜怒哀楽(プロフ) - ゆきなさん» ゆきな様コメント有難うございます！ (2020年1月15日 2時) (レス) id: 65bce10cce (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 泣けた (2020年1月15日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：喜怒哀楽は見切り発車
| 作成日時：2019年12月31日 0時
