悩み。 ページ35
しっかり兄と話をしたのは恐らく潜る前じゃないかな?
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7年前の11月7日の話だ。
兄にマンションに行くなやらと言われた日…
幸い死傷者はいないというニュースをみて安堵したのをよく覚えている。
黒髪に染めた長い髪が風で揺れた。
「A!」
『お帰り兄様…?どうしたの、煤…?焦げ臭い…。』
花火でもしてきたの?なんて眉をひそめて知らないふりをする私に、兄はまぁでかい花火だったぜ?と不敵に笑った。
「不発に終わっちまったがな…?」
『怪我、しないでね?』
大丈夫だと話す兄は無茶ばかりだ。
「それより、将来どうするんだ?やっぱり大学は出るだろ?」
『まぁ、考えてはるけど…欧米に行こうかなって。』
卒業したらスケーターとして本格的に動きたいし…
「いいんじゃねぇか?お前のすきにすればいい。あんまり逢えなくなる訳か。」
『シーズンオフには実家に帰る予定かな…一応。』
兄様も忙しくなるでしょう?
「実はな…A。」
と強ばった声色の兄は何かを言いかける。
「…お兄ちゃん出世したから!これからはほら、中々Aに顔も見せねぇかもしれねぇし連絡も、実家にだって戻れねぇかもなんだけどな?心配、するなよ?」
お兄ちゃん強いからよ!と笑った彼に悟ったのは私だ。
あぁ…きっと兄様は本格的に潜るんだろうなぁ。
漠然とそんな嘘を“吐かれて”も、私は分かったよと笑ったんだ。
『待ってるよ。偶にでいいから…帰ってきてね?』
文句も言わず、まだ仕事があるからと背を向ける兄に、気をつけてね?と玄関先で会話したのが実質最後の会話だった。
それから、一人で高校を卒業…見送りも無く渡米。
だから、いざ生きていると実感した時は涙が止まらなかったのは仕方がないのだけれど…。
─────
『あんまり上手く、話せない…んです。』
「ほー…で?お前はどうしたいんだ?」
『昔みたいに話したいんですが素直さより突っぱねるコレをどうしたらいいですかね?』
「なぁ…俺に相談する事か普通?」
『だってアイリッシュさん話やすいので…』
少し呆けた彼はそうかよ…といって私の頭を不器用に撫でた。
「その儘でいいだろ?無理に直す必要なんてねぇ。」
無理に直す必要なんざねぇ。
『あ…』
そうか、話しやすいのは…何となくアイリッシュの雰囲気が次元さんと似てる?なんて…
『有難う、アイリッシュ…。』
引き攣った笑みではなく、何時かの様に自然と笑顔が零れた。
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明里香(プロフ) - 設定に誤字がありました。「家計」ではなく、「家系」です。 (2020年1月18日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
喜怒哀楽(プロフ) - 玲乃音さん» 玲乃音様コメント有難うございます!アウトドア派な兄とは真逆のインドア派であったが為の遭遇…知り合いだと最近思い出す妹ちゃんです…有難うございます!精進致します。 (2020年1月15日 20時) (レス) id: 65bce10cce (このIDを非表示/違反報告)
玲乃音(プロフ) - まさか……夢主達とジンは知り合い説…続き楽しみに待ってます (2020年1月15日 19時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
喜怒哀楽(プロフ) - ゆきなさん» ゆきな様コメント有難うございます! (2020年1月15日 2時) (レス) id: 65bce10cce (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 泣けた (2020年1月15日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:喜怒哀楽は見切り発車 | 作成日時:2019年12月31日 0時