Vampire2℃ (ページ10)

今日:22 hit、昨日:6 hit、合計:17,760 hit

60.ズルい能力ページ10

.

少し間が空いた。

「人間を虜にする能力がある吸血鬼。」

『人間を虜にする？』

「吸血鬼って、精気とか血を
　吸っていかないと生きていけない
　生き物だからそんな能力を持ってる奴は
　結構有利なんだ。
　自分が努力しなくても
　向こうから自分の方に
　寄ってくるからね。」

『それって、
　人間にモテるって感じ？』

「あ、そうそう！
　そんな感じ！」

『へ、へぇ…。』

「だからギョンスが担当した
　お客さんは大体リピーターになる。
　頭いいよな、今の仕事を選んだアイツ。
　ギョンスにとって天職だよ。」

あれ、私ってやっぱり
あの時利用された？

そんな能力聞いてなかった。
そりゃ私も、恭子だって
好きになっちゃうよ。

じゃあ私のギョンスさんに
抱いていたあの感情は、
ギョンスさんの能力から
生じたものだったの…？

一気に気が抜けた。
期待をしたりワクワクしていた
数ヶ月前の自分が
本当にバカらしくなってきた。
でも同時に悲しい。

「きっとAちゃんも
　その能力に囚われてたんじゃないかなって
　そう思って…」

『そう…かもしれない。』

「そんな能力に頼る男よりも
　…本気で好きな男が近くに居るってこと、
　Aちゃんには知って欲しくて。」

そっと握られる手。

ベクは、私のことを本気で…

私って意外と単純なんだな。
あと何か一押しされたら
ベクのこと、
本当に好きになっちゃいそう…

「…あ、Aちゃん！
　スイーツ食べに行こ！
　俺お腹減っちゃった！」

手をぎゅっと握ったまま
私をどこかへ連れ出す。

『…うん！』

私はようやくギョンスさんを
忘れられそうだ。

…

「小野寺さん…
　今日もいらしてくださったのですか…？」

「はい！もう、切り替えましたから！」

告白をされて断ったが
小野寺さんはめげずに通ってくれている。

VIPのお客さんはこういうことで
店を変えることが多いから
実は入れ替わりが比較的激しい。

「もう、ギョンスさんのこと
　なーんとも思ってないですから！」