Vampire2℃ (ページ8)

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58.チョコレートの銀紙ページ8

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「大丈夫？Aちゃん？」

『へ！？あ、ごめん！
　ボーッとしてた。』

「このカフェちょっと肌寒いよね、
　俺のジャケット着てて良いよ。」

ふわっとかけられるベクのジャケット。
良い香りがする。

早くギョンスさんを忘れたい。
今はベクに甘えてもいいだろう。

ジャケットのポケットから
カサカサと音が聞こえたので
手を入れてみた。

ぐちゃぐちゃになった銀紙…。
この柄、見覚えがある。

そうだ、恭子から貰ったあのチョコ。
見たことのないような柄の
銀紙だったからよく覚えてる。

なぜベクも…？

『ねぇベク、これチョコ？』

「あ！ごめんごめん、
　ゴミ入れっぱなしだった！
　捨てなきゃだね〜。」

『どこのチョコ？』

「俺もわかんないけど、
　お店のお客さんからの
　差し入れだったんだよ！」

点と点が繋がりそうだ。

恭子は私と同じようにあそこに
通っていたのか。

「あ、俺Aちゃんに
　言っておかなきゃ
　いけない事があるんだ。」

ベクは改まって私の方を向いて座る。

「俺、実は…吸血鬼なんだ。」

『知ってます。』

「へ！？」

『チャニョルさんもだよね？
　なんとなく気づいてたよ。』

「なんかそんな気もしてたけど
　やっぱりか…。」

少し表情が暗めのベクくん。

『別に私はいいよ？
　お友達が吸血鬼でも。』

「Aちゃん…。」

『でも、私の血を吸い尽くして
　殺さないでね？』

「い、いや！！
　そんなことはし、しないよ！！」

『今ちょっと吸いたいって思ったでしょ？』

「いや、まさかっ！！」

少し顔を赤くするベク。
図星だったようだ。

「そろそろ帰ろうか、駅まで送るね！」

改札のところまで丁寧に送ってくれた。

『じゃあまた！』

「うん！またお茶しようね！」

私が見えなくなるまで
手を振ってくれた。

最初にベクと会った時、
勧誘だったのは間違いないけど、
優しい人だと思っていた。

空に浮かぶ綺麗な満月。

ベクの可愛い笑顔と、
ジャケットの香りにキュンとした
記憶が蘇る。

どうしよう、
どんどん意識しちゃうじゃん。

でもまだ今はしっかりベクの
気持ちに応えられる自信は無い。

もっとベクのことを知っていかないと…

そういえば昼に会いたいって言ってたけど
吸血鬼は昼間は外に出るのは
難しいんじゃなかったっけ…？