53.訓練開始 ページ3
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誰も居なくなった店内を確認して
スタッフルームに戻ってきたチャニョル。
「やる事はシンプル。
稀血を目の前にして理性を保つことが
できるようになれば良い。」
「簡単に言うけど
それができたら苦労しないよな。」
「そういう事。だから訓練だ。
俺が用意したこれは、訓練用の血だ。
俺には効かないが、
訓練をしていない吸血鬼なら
衝動が発動する様になっている。」
チャニョルは透明な小瓶に入った
真っ赤な血を取り出した。
「え、もうこの1、2時間で
用意してくれてたのか？」
「俺は仕事が早いからな！」
チャニョルは話を続けた。
「まだAちゃんの血を
吸った事はないから正確じゃないけど、
香りだけでも大体わかる。
Aちゃんの血は、この血の
二回りも上のレベルってことだ。
…あの子は相当だよ。」
人差し指をクルクルと上へ向けたその指で
俺を差した。
「いきなりそんな高レベルのもので
訓練しても難しいだろうから、
まずは低いものから。
とは言え、お前にとってこの血も
理性が飛んでしまう危険な稀血だ。」
「ふーん…」
「吸血鬼の体質によっては、
この血を飲んだ瞬間から
四六時中欲してしまうような
ものもいれば、
思い出したように後から
欲するようになるものもいるし、
お前みたいにその血を目の前にした時だけ
欲するようになるものもいる。」
チャニョルは小瓶からピペットで
血を吸い取り、ペトリ皿に出した。
「なんか理科の実験みたいだな。
こんな器具、店に置いてたんだ。」
「俺が持ってきてやったんだよ。
そんな陽気なことを言ってられるのも
今のうちだぞ。
さぁ、一旦香りを嗅いでみろ。」
言われた通り、恐る恐る嗅いでみる。
「っ…！？」
「香りだけでも反応しそうか？
一滴だけ飲んで、反応をみよう。」
手の甲に乗せられた一滴の血。
ペロリと舐めた瞬間、
だんだん激しくなる心臓の鼓動と共に
地獄の訓練が始まった______
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作者名：ゆゆゆ | 作成日時：2023年11月5日 8時
