なにわこじらせ女子２ (ページ49)

今日:11 hit、昨日:21 hit、合計:140,547 hit

3 ページ49

.

自販機まで来たものの、財布忘れてコーヒーなんて買えないし。

無性にメンバーと話したくて、みんなの今日のスケジュールを思い出す。

仕事中に連絡したら迷惑やろし…
誰かオフやったかなぁと、スマホ画面を開こうとしてグイッと腕を引かれた。

「…っ…わ？！」

「朔、戻るよ」

びっくりしてる間に、踵を返しただいちゃんに半ば引きずられるようにして歩く。
すれ違ったスタッフさんが不思議そうに見てくるのを、アイドルスマイルで寄せ付けないオーラを出しながら進む背中に感心していると楽屋に着いていて。

…もうあの子の姿はない。

当たり前か。
だいちゃんが共演者さんほってくるわけないやん。

誰も居ない室内でソファに座らされると、すぐ横に座っただいちゃんがまっすぐ視線を合わせてくる。

「…さっきの態度、あかんよな。楽屋まで挨拶来てくださってる方が居るのに、出ていくん失礼やん」

「…ごめんなさい」

言われてみれば失礼な態度やったなぁと、返す言葉もなく視線を落す。
なんか久しぶりに普通にだいちゃんに叱られて、普通に落ち込んできた。

相手が自分に好意的でないからといって、失礼な事をしてもいい理由にはならん。

そもそも、あの場に居りたなかった理由なんてあの子にはなくて、

「ちゃんと、わかってるならええよ。

…ふふ、ヤキモチ妬いたんやろ」

俯き気味だったわたしの頬をむにっと摘んで、覗き込んでくるお顔には悪戯な笑みを浮かべている。

「あの子、初対面からあからさまに気のある態度やねん。収録前やし愛想しとこ思たんやけど…嫌やった？」

「…ほんまに楽しそうに見えて、わたしには入れない話題やったし…だいちゃんはわたしが居るの忘れてるんかと思った、だけ」

一人ぼっちにされた感じが…ちょっと寂しくて、もやもやする胸が苦しくなるのが嫌やって、ちょっと責めるような口調になってしまった。
こんなん、ほんまにヤキモチみたいやん。

気まずくて視線を逸らすと、ぶはっ！て吹き出しただいちゃんにまた抱きしめられる。

なにがそんなに可笑しいのか、笑っているのが振動からも伝わって。

「…そんなに笑わんといて」

「ふふ…っあ〜、ほんま可愛すぎる〜！俺が朔が居るの忘れるわけないやろ。

…なぁ、そろそろ一番の推しはだいちゃんやって、認める気になった？」

耳元で囁くような声に、ぞわりと肌が粟立ち思わず首を縦に振ってしまって。

沼は深いって言葉、ブーメランやんって自分にツッコんだ。