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「朔ちゃん、具合悪いん？」
長身を折り曲げて、言葉通りに心配そうな表情と声でわたしの顔を覗き込んでくるみっちー。
スタッフさんが用意してくれた食べ物たちの誘惑に負けへんように、テーブルにしがみつくように突っ伏していると、体調が悪いと勘違いされたらしい。
大丈夫？と下がる眉尻に加えて、垂れた耳としっぽの幻影が見える。
わんちゃんかな？
イケメンわんちゃんよしよししたい。
「大丈夫やでぇ、心配してくれてありがとう」
「ほんまに大丈夫？我慢せんで、なんかあったら言ってな？今日は大吾くんも丈くんもおらんし…俺じゃ頼りないかもしれないけど…」
優しいみっちーに申し訳なくて、体を起こすとぎゅっと掌を握って元気アピールをする。
「ほんまに具合悪いとかやないから、」
「アレやって、みっちー。朔、女の子の日やねんて」
みっちーの心配を払拭したかったわたしの言葉を遮ったのは、撮影を終えて戻ってきた恭平で。
後ろから現れた姿とわたしとを交互にみて、え？あ！え？！と、意味を持たない音ばかり漏らすみっちーの耳がほんのり染まる。
「ご、ごめん、気づかなくて…ってか、恭平、お前デリカシー！」
「いやいやいや、だからちゃうねんて…きょろちゃん嘘言わんといて！生理はそろそろやけどまだやねん、食べたいの我慢してるだけ…って何言わせんねん！」
「勝手に言うたやん。え？なんで我慢してんの？」
「え？え？どゆこと？」
よりによってダイエットに一番遠い人たちにバレた…
おまけに生理が近い宣言もしてしまった。
マネさんに丸くなったって言われてからできるだけ間食を控えてるけど、生理が近いことを思い出したら余計に何か食べたい欲求が高まってきた。
「えぇ？…変わってなくない？全然丸くなってないで。今の朔ちゃんのままでええよ。我慢するほうが体に悪いって」
しょんぼりするわたしにみっちーの優しさがしみる。
ただのフォローだったとしても嬉しい。
「…っひぃ？！」
「ちょっとくらい柔らかいほうが触ってて気持ちええやん。
……二の腕と胸の柔らかさが同じってガチ？」
むに、と脇腹を摘まれて変な声が出た。
純粋に柔らかさが気になっただけなんだろうけど…
今度は二の腕を揉もうと、わきわき指を動かす恭平から離れみっちーの後ろに隠れる。
「……恭平とはしばらく口きかへん」
「え！なんで？！」
「お前が悪い。大吾くんに通報するから」
「待って待って、ごめんやん！」
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作者名：斗和 | 作成日時：2022年9月1日 22時
