天高く馬…？ ページ44
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「朔…食べへんの？」
「んぇ？
えー…、うん。いま、お腹すいてないねん」
「え？」
「え？」
「…そんなことあんの？」
「なんでやねん！ふつうにあるわぁっ」
表情をぴくりとも変えずに真面目なトーンで言う恭平に、思わずつっこんだ。
暫しじっと見つめられ、見透かしてくるような視線に負けないように見つめ返しつつも、気持ち、体が後ろに下がる。
そんなわたしに気付いてはいるだろうけど、それ以上はなにも言わず隣に座ると、恭平はスマホを開いた。
ごめん。
だって言いたくない。
太っちゃったみたいやから食べるのを我慢してる
なんて…！！
今までなにも気にせず食べたいときに食べたいものを食べたいだけ食べて生きてきた。
体重計だってしばらく乗ってなくて。
そうしたらこの間、マネさんに…
「朔ちゃん、最近丸くなった？」
って…衝撃の一言を投げられた。
そう言われると、心なしか色んなところが柔らかくなった気もする。
人目に触れるお仕事をしている身として、デビューさせてもらったばかりの身として、こりゃあかん、と一念発起。
わたしは、人生初のダイエットを始めた。
撮影スタジオにはスタッフさんが用意してくれたお菓子や軽食なんかも置いてあって、いつもなら真っ先にいただきに行くけども…
今日は素通り。
端っこでちびちびお茶を飲むわたしに、違和感を感じたのか冒頭のきょろちゃんである。
テーブルに頭を置いて、きょろちゃんを眺める。
羨ましいほどのスレンダーボディ。
みっちーもやけど、食べないわけやないのにスラッとしてスタイルが良い。
今のわたしの悩みなんかとは無縁なんやろうな、と思うとちょっと悔しくて、完全な八つ当たりでスマホを弄る腕を突く。
「なん？」
「なんもない」
「寂しがり屋さんか。構ってちゃんか」
「ちゃうし」
スマホを操作しようとするたびに腕を突くというウザ絡みをすると、手が捕まえられて動きが封じられてしまった。
「あぁぁ〜」
「なんなん今日」
「なんもない」
「なんもなくない」
「なくないくない」
「なくないくなくな、あ。あれやん」
「？ なに？」
「女の子の日や」
正解やろ、とでも言うように得意げに言われる。
確かにそろそろやけど、いや、なんで知ってんねん。
「まだやし！」
「なんなんもぉ、今日の朔は難しいわ」
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作者名：斗和 | 作成日時：2022年9月1日 22時
