なにわこじらせ女子２ (ページ42)

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【大橋】

宴も酣。
明日は早いからと、迎えも来ているからと大袈裟なくらいに申し訳無さそうにしてその場を離れた。

本当は迎えなんかなくて、タクシーを拾い寝泊まりしているホテルに帰る。

結構飲まされてたみたいだったけど、朔の足取りはしっかりしてるし言動もはっきりしていて。
強いとは思っていたけど、ほんまに見た目に似合わず酒に強い、となかば関心していた。

「おつかれさぁん、しっかり休むんやで」

部屋前に辿り着きおやすみ、と別れを告げようとして上着の裾を掴まれる。

「…おーはしくん」

さっきまでとは違う声の響き。

上げた視線の先で、潤み揺らぐ瞳とぶつかる。

そこで漸く気付いた。

やっぱり相当な量の酒を飲まされていたことに。
人見知りで、慣れない人が多くいる場で、崩れてはいけないと気を張り続けていただけだったことに。

ホテルに帰ってきたことで気が抜けたのか、急にグラつく体を慌てて支える。
扉を開けて室内に入るとベッドに座らせ、冷蔵庫から水を取ってくると蓋を開けた。

「水飲んどき。…ごめんな、一緒に居ったんに早う気付いたらんで」

朔の前にしゃがみペットボトルをさしだせば、弱々しく頭を横に揺らしながら受け取る。

酔いのせいなのか、少しだけ泣きそうにも見える表情でくしゃりと顔が歪んだ。

「…おーはしくんは、助けてくれたやん。ほんまは、自分でなんとかせな、あかんのに…ごめん…」

「そんななるまで飲まされる前に、助けられへんかったやん…ごめん」

「あやまらんといて…つぎはちゃんとするから…、もっとお酒もつよぉなって、女だからってまけへんから…」

水のペットボトルをサイドテーブルに置き、にへらと緩い笑みを見せた。

朔は小柄な容姿やイレギュラーな立場もあって、昔から理不尽な経験をしてきているのを知っている。
あらゆる標的にされやすい中で、ただ、負けないようにといつも必死なんも…

少しだけ熱を帯びた頬に手を添えると、擽ったそうに双眸を細めてすり寄るように寄せてくる。

「おーはしくんの手は、安心する…。

……あのスタッフさんなぁ、話しかけてくれてんけど……ずっとニヤニヤしてて、強いお酒ばっか勧めて

…べたべた、触られて…ほんまは…」

続く言葉は、聞こえなかった。

伸ばされた手に応えるように隣に座ると、弱々しくしがみついてきて。

「がんばったなぁ、えらかったなぁ」

背中をさすっていると、やがて小さな寝息が聴こえてきた。