JFC ページ18
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【大橋】
「ぁ…、あぁ…んあ〜〜…っ」
「……朔」
「あっ…？！や、ややぁ…」
「…朔〜〜」
「や、…あぁ…っ」
「……………」
「あぁっ！…もう、…っ！」
─────あかん。
隣の子ぉがさっきからやらしい声を出している。
「…っぁあ！いやや、…またこの画面やぁ〜」
心なしか瞳の水分量多めで、うるうるさせながら握りしめたスマホを揺らす。
今日はデビュー曲のレコーディングの日。
そして、ファンクラブの入会申込の開始日でもある。
ほんまは俺の入りはまだなんやけど、朔に一緒に来てと言われて断るはずもなく。
レコーディングの合間にこの状況。
──大変ご迷惑をお掛けしております。
ただいま、大変つながり難くなっております。──
もう、何度目にしたかわからないこのメッセージが、朔のスマホに表示されている。
もちろん、俺のスマホにも。
同じメッセージが繰り返されるスマホ画面に、ソファで隣に座っていた朔は子供のように地団駄を踏んで、レコーディングスタジオのテーブルに突っ伏した。
その様子を見て、周りにいたスタッフさん達から笑い声が漏れる。
「大橋く〜ん、繋がった？」
「全然繋がれへんなぁ〜。たくさんの人が一斉に申し込んでくれてるってことやろ？ヤバない？」
「会員番号１番を夢見てたのに…！１番どころかいつ繋がるかわからへんねんけど…ツライ」
念を送るように両手で握りしめたスマホを揺らしながら、また画面とにらめっこしとる。
レコーディング中断したままやけど…
スタッフさんも優し過ぎるわ。
結局、ファンクラブの申込みページには繋がらないままレコーディングを再開して。
テンションだだ下がりやったけど、そこはちゃんと切替えてる。
思うように歌えないって、一回一緒にメロディなぞったりして。
他の誰でもなく俺を頼ってくれた事が嬉しいし、メンバーの誰よりも先に朔が歌うデビュー曲を聴けるのも嬉しい。
やっぱり朔の歌声が好きやなって思ってたら、ブースのガラス越しに目が合った。
今の良かったで、って思いでサムズアップしたら、嬉しそうに満面の笑みで。
「かわええなぁ」
つられて頬が緩むのを感じながら視線を手元に落とすと、スマホの画面が進んでいた。
「あ」
やっと繋がって、テンション上がって朔に報告したら裏切り者認定されたんやけど…
なんもズルしてないで？！
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作者名：斗和 | 作成日時：2022年9月1日 22時
