2話 ページ17
黄 side
狐と人間の間に生まれた半妖。
それが俺だった。
人間の身体に狐の妖力を持つ俺は、今みたいに妖力が暴走する事がある。
力が狐となって現れ暴れ回る事を、他妖は愚か、自分でさえ止められない。
こんな事なら、「一族の恥」と言われ、村から追い出されたのも、頷ける話だろう。
「・・・あらら、すぅごい事になってるねぇ。」
そんな事を思っていると、
突然、背後から、この場に似合わない間延びした声が聞こえた。
声の主を辿ろうとして、振り向くと、その途端、空気が震えるような気がした。
淡い藤色の着物に、藍鼠色の羽織。
俺と同じような、白い狐の面。
煌めく星をそのまま閉じ込めたような紫の瞳。
そして、風に靡く、純白の九つの尾__。
満月を背に佇む姿は、息を呑む程美しく、
妖しく微笑む姿は、妖気に満ちていた。
『__狐一族には、守り神がいるんだよ__。』
そのあやかしを見て思い出したのは、
唯一、俺を可愛がってくれた婆ちゃんの言葉。
『千年に一度生まれて、代々、私達を見守ってくれるんだよ。
ヒカルも、覚えておくと良い。
今の天狐様のお名前は__。』
きん げつ
「あれぇ、俺のこと知ってるんだ。」
思わず出ていた声は、妖、もとい菫月に届いてしまったようだ。
菫月は、満足そうに笑みを溢すと、
何故か、その眼を閉じた。
「えぇっと、なになに・・・。
あぁ、君、半妖なんだ。昔、そんな狐がいたきがするけど君のこと?
だとしたら、おっきくなったねぇ。
あ〜あ、こういうのも直してかないとねぇ。」
呆気に取られる俺の前で、呟き続ける菫月。
・・・ってか!
「何で 「何でヒカルの事を知ってるかって?」 ・・・え?」
・・・俺、名前とかっていったっけ???
えっ言ってないよね?ね?ね?
「言ってないよ。」
え、やだ、やだぁ、こわい。
「まあ、そりゃそうか。
言ってない事とか、思ってる事言い当てられたら誰だってビビるよねぇ。」
俺の心を読んだかと思えば、
「やっぱ、これ怖いよね〜」と、うんうん悩んでる菫月。
・・・よしっ、今のうち。
「・・でもね、ヒカルをそのまま逃がすわけにはいかないんだなぁ。」
逃げようとした俺が、背中で聞いたのは、
唱えられた呪文と、
柔らかな狐の鳴き声。
それを最後に、俺の意識は、段々と薄れていった。
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作者名:桃百合 | 作成日時:2023年12月12日 9時