人魚公主 (ページ7)

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速効性ページ7

A公主は、卓上の錠剤ふた粒を一気に掴んだ。

それを、巫女が止める間も無く自分の口の中に放り込んだ。

「公主様！」

巫女が慌てている間に、A公主の口の中に苦い味が広がる。

「水！」

「本当に人間になって声を失うのですよ？それでも良いのですか？」

「いいからさっさと水持ってきて！」

高い天井いっぱいに響き渡る声で叫んだA公主、

その勢いに圧倒された巫女は繕わない声で叫んだ。

「誰か、水を持って参れ！」

侍女が持ってきたグラス一杯の水を、A公主は勢いよく引ったくってぐびぐびと飲み干した。

口をぽかーんと開けてそれを見ていた巫女。

「にっが。こんなに不味いとは思わなかった」

「そりゃあ、すぐ効くように水に溶けやすい錠剤になっているから……」

ボリボリと頭を掻きながらそこまで言って、巫女はハッとした様子で叫んだ。

「速効性！」

巫女は慌てた様子で部屋を走り回ると、天井から釣り下がっている紫色の布の装飾を引きちぎった。

そして覚束ない手つきでA公主の腰に巻く。

「これは？」

「尾びれがなくなったときにスッポンポンにならないようにするためだ。それと……」

さっき錠剤を取り出してきた棚をごそごそと漁ると、

また白い錠剤ふた粒を取り出してA公主に握らせた。

「これは、人魚に戻りたくなった時用」

「えっ、戻れるの？」

「一応そういうことになっているけれど、戻ろうとした前例がないから分からない」