人魚公主 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:7,552 hit

短絡的な思考の末路ページ3

男を水面に引き上げた後、A公主は素早く水の中に潜った。

親衛隊が、海の中まで助けにきていたし、

水の中にいた時間もそう長くはなかったから、大丈夫。

水底の王国への帰り道は自然に早足になった。

宮殿に入ったはいいが、喜び勇んで姉の部屋に入っていく歩みを、不意に止めた。

お姉さまたちには、言わないでおこうか？

『良い男がいたら姉さんに教えてね、約束よ！』

A公主を送り出す時の姉の言葉を思い出したが、

それでも何だか言いたくない気がする。

「そもそも、約束っていうのはお互いが同意して初めて成立するものじゃない。

『約束よ！』って言われただけで本物の約束？そんなはずないわ」

ぼそぼそと独り言を言っては勝手に頷くA公主。

あの王子様を、自分だけが知っている存在にしたいな。

そう思ったところで、不意に思い出した。

王子様を引き上げた時に岸にいた1人の女の存在、

そして、かの有名な『人魚姫』の続き。

王子様は、自分を助けたのはあの女人だと勘違いして、

その女人と恋に落ちて、結婚してしまうんだわ！

そうでなくたって、どのみち、

お姉さまたちに言わなかったところで、人間界の皆が王子様の存在を知ることになるんだ。

どうしたらいい？

A公主は、小さく、そのサイズ相応に中身のない脳みそで必死に考えた結果、

ワンパターンにもかの童話を再び想起するに至った。

「そうだ、人間になればいいんだわ！」

王家の中でも最も世間知らずな末娘は、その短絡的な思考回路を以てある人の元を訪ねた。