人魚公主 (ページ11)

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美しい世界ページ11

「大丈夫ですか?」

若くて経験の少ないと思われる看護師がオロオロとした様子でいるのを見かねて、カン・ヒョングはA公主の目の前にしゃがみこんだ。

A公主の視界いっぱいに、彼の顔。

そして彼女の顔を覗き込む彼の瞳の中には、A公主自身の顔が写っている。

水晶に映った像のようにくっきりと輝いていたそれは、徐々にぼやけて見えなくなった。

A公主は、目頭が熱くなるのを感じた。

1人の人間を目の前にして、その1人の人間もその目の中に自分の姿を捉えているという事実。

ぽたぽたと涙がしたたり、少し開けた視界の中では、

カーテンの間から射し込む陽の光をうけてきらきらと輝く景色。

まつ毛に付いた涙の粒でさえも、光が散乱して輝いている。

美しい世界だ。

胸いっぱいに広がる感慨。

「どこか痛いですか?」

近くで彼の声を聞けば、鼓膜が揺れて音が聞こえる。

「点滴の付いていたところが傷になっているかもしれないので、袖をまくりますね」

そっと出した肘の内側に、冷たい手の感触。

ガーゼをめくってその下を見る。

「大丈夫、傷にはなっていないですよ。

転んだ時にうまく針が抜けたみたいです。見ますか？」

自分の左腕が視界に入るように動かされたときには、彼の冷たかった手はA公主の体温で温まっていた。