人魚公主 (ページ2)

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人間界の王子様2 ページ2

何とか仲直りをしたみたいだ、って安心したのも束の間、

すぐに戻ってきた、“崖っぷちだった男”。

彼の足は岩の上、視線は足下の海へ……

そして海上に1人浮かぶA公主へ。

男の、幅の広い二重に囲まれた水分の多い目が、ぐん、と広がる。

驚くのは無理もない、でも、あまりにもタイミングが悪かった。

重心が偏る、落ちる方向に力がかかる、そしてさらに重心が偏る。

物理法則に従って、重力に抗うことができずに彼は大岩から海に身を投げた。

「危ない！」

A公主の叫び声、そして、岩の上の人間たちの叫び声が共鳴した瞬間だった。

空中を舞った男の体は、透明な水の中に吸い込まれた。

A公主は煌めく尾びれで一つ水面を叩いて水に潜った。

私が助けなきゃ、溺れて死んでしまう。

大して高い場所から落ちた訳ではないけれど、この辺は岸の近くでも深いんだ。

水の中で、力なく沈んでいく男の姿を認めると、

A公主は尾びれの動きを早めて素早く近づいた。

そして、言葉を失った。

きれい。

高く細い鼻からおでこにかけての長い鼻筋、そこからおでこにかけての広がり、そして眉間の一番高いところからいくらか奥にある目には、閉じている瞼が美しい線を描いている。

すぐに、A公主はかの有名な童話を想起した。

人魚姫。

男は史書判書(イジョパンソ)の判官(パンガン)さまの恰好をしているけれど、

腰から覗いた刀の鞘、その木彫りの緻密な模様を見て、A公主は確信した。

この人が、王子様だ。