キスから始めよ。

憎いそいつ -KH side- ページ21

ちゃんと加減するから、と言うと

Aは笑みを浮かべなからも少し寂しそうな顔をした。
俺の前で、そんな寂しそうな顔しないで...。

なんて考えてたら

いきなり彼女に手を握られて。
ゆっくり話し出した。

"情けなくて、ごめんなさい"

彼女はそう言った。
最初はよく意味が分からなかったけど

彼女の話を聞いていたら、何となく分かってきた。


｢あのね、私にも出来たの。この人と一緒に幸せになりたいって思う人が。｣


ウソだ。

俺...
そいつにAを奪られるかもしれないの？



｢その人に大事に想う人がいたとしても私は……｣


もう聞いてられない。

Aから聞きたくない、そんな話。
そう思ったら

身体が勝手に動いて。


次の瞬間には

Aの唇を捕らえていた。


俺はこの瞬間、何を考えていたんだろう。

ただ、

ただ、俺は

他の誰かを愛しそうに考えているAを見るのが
世界で一番、嫌なんだ。


唇をやっとの思いで離すと
頬を真っ赤に染めた彼女。

いつになったら気付いてくれる？



キスしてる間も、彼女の手が俺の手を包んでて。
それがとっても幸せで。

彼女は今それに気付いたのか、恥ずかしそうに手を離そうとしたけど

そうはさせない。


誰にも渡すもんか。

そう思ったら自然と抱きしめる力も強くなって。



...でも俺は馬鹿なのか。


「...A、その人のこと好きなの？」


こうやって話を振ることしか出来ない自分が嫌になる。
俺が今一番憎んでるヤツは
Aを"この人に幸せにしてもらいたい"って

そう思わせる、そいつじゃないか。


いろんな表情
いろんな声のトーンで

そいつのことを話すA。
俺はこうして、彼女を抱き締めることしか出来ないで終わっていくのか？


「キュヒョンさんは？」


俺のことを聞いてくる彼女。

もう何だっていい。
Aへの想いは、きっと本人には届かないけど。
こんなに近くにいるのに届かないけど。

俺は、まるで告白してるみたいに

本人の前で、彼女のことを話す。


本気だよ。
こんなに本気にさせられたのは、Aしかいない。


こんなにも俺のことをめちゃくちゃにする彼女が
本当に好き。

まるで天使と悪魔みたいな彼女。


「私の好きな人も、そんな感じ(笑)」


笑ってそう言うA。



どうか、どこにも行かないでほしくて。


"Aが俺以外の男の彼女なんて有り得ない。"


そう心の中で呟いて。


隙を見せるAに



またキスを落とした。

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